第376話 ここでも
「まさか彼に私たち以外にもファンがいただなんてねー」
「いや、私たちはファンではないだろう」
「いやいやいや、どこからどう見てもファンじゃないですか! 四六時中彼のことを監視しているんですよ? 普通に考えたらアウトって言われてもおかしくないですからね? まあ、今となっては契約書にサインしてくれたのでバッチリ合法ですが」
んーこの人の発言の方がよりアウトな気がするんだが……まあ、考えてしまったら終わりだろう。
それに、彼を監視することは私たちの使命といってもいいのだがからな。
「どうやらこのプレイヤーは魔王軍でスパイとして活動していくようです」
「スパイ?」
「はい。人間共、主にプレイヤー達の間で重要な情報が流れたらそれを彼に報告したり、逆に嘘の情報を流して混乱させたりと、情報屋であることを生かして立ち回らせるみたいですよ」
え、何それズルくないですか?
だって、彼はソロで圧倒的に強いから魔王なんだぞ? そんな人類側にスパイなんていたら平等じゃなくなってしまう。いや、最初から平等じゃなかったけどそれが更に加速してしまうぞ?
「いやー、先輩も思いますよね、これはやばいって。私もそう思います。でもこれには一つだけまだ付け入る隙があるんです!」
「なに、付け入る隙、だって?」
「はい。それは信頼関係です! だってそのプレイヤーは一度会ったことあるとは言え殆ど彼からすれば初対面のようなものです。普通そんな人物をやすやす信頼するでしょうか? スパイ、偵察という名目で近くに置かなかったのが良い証拠です!」
彼女の顔を見るとドヤァ、と効果音がつきそうな顔をしていた。そんなに胸を張れることか? いやまあ、些細なことでも誇れるのはいいことだと思うぞ? 卑屈になるよりはな。
「このプレイヤーはメガネをかけていますね! ゲームの世界ではわざわざつける必要がないので相当メガネが好きなんですかね? それともアーティファクト級の何かとか?」
「いやいやアーティファクト級のメガネなんて存在しないだろ。普通におしゃれ目的じゃないのか?」
「んーおしゃれをするような人には見えないんですけどねー。しかもおしゃれ目的ならもっと、それこそオシャレ! っていうメガネを選ぶでしょうし、他にももっと気を遣う部分があるように思いますが……」
それは偏見だろ。それに、彼女からおしゃれを指摘されるメガネくんも可哀想だ。
でも確かになんでつけているんだろうな。知的にみられたい、とかだろうか。情報屋をしているのならばそれも無駄ではないだろう。後は、日頃からつけていてつけていないと落ち着かない、とかもあるかもしれない。
こうやってその人がなぜそういう行動を取っているのか推測するのが好きだったのに、近頃は彼のせいで全くできなくなってしまったな。
彼しか見ていないというのもあるし、彼は推測したところでことごとく外れてしまうからな。
まあその分、奇想天外な行動で楽しませてくれるからトントンといったところだな。
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