第364話 追い込み漁業
彼が責任を持って強くする、この意味が分からない程私たちは腑抜けていない。
だが、我々にはどうしようもないというのもまた事実なのだ。彼は一切やましいことをしておらず、彼自身罪の意識もまるで無いため、本当にどうしようもないのだ。
彼に関して何度この状況に陥っただろうか。もはや諦観の域にすら達しようとしているのだが、それでも気を揉んでしまう。
はぁ、彼にはもう何もしてもらわなくていいんだがなぁ。
「あ! か、彼が『もう一度今から第一階層に戻り、再び第二層へと到達してくるのだっ!』とかなんとか言ってますよ!? これはかなりガチで強くしようとしてるんじゃないですか??」
確かに、これはガチだな。
確か、ただの人間のプレイヤーはなんとか第一層を突破していたはずだ、それも運良く。そんなプレイヤーにもう一度同じことをさせようと言うのはあまりに酷だ。
それに魚人の二人も前回はいけたかもしれないが、今回も同様にクリアできるとは限らない。むしろ、厳しいと言っても良いだろう。
何故なら、第一層は今もなお強くなり続けているからだ。
九重魔鮫龍をフロアボスに、さまざまな海棲モンスターが跋扈し、訓練され続けているのだ。つまり、昨日よりも今日が、今日よりも明日の方が強くなっていると言うわけだ。
そして、第一層にはまともな遮蔽物もないのだ。訓練されたモンスターが次々と襲ってくる中でどうやって第一層を潜り抜けろというのか、私には想像できない。
彼はかなりサディスティックなのか? もはやそうとすら思えてくるほどなんだが、もしかしたら、これが素晴らしい育成方法なのかもしれない。方法だけでなく、結果を見て判断しよう。
❇︎
「それで彼らはどうなったんだ?」
「え、そりゃ死にまくってますよ? どうやら彼は何度でも挑戦して良いと言ってたららしく、延々に挑戦させてはモンスターたちに食べさせているようです」
おいおい、モンスターに餌やりをしている、みたいなノリで言うなよ。
にしてもそんなことをさせていたのか。確かに魔王のような訓練方法だが、これで強くなるのか? もしかしてモンスターを育てているんじゃないか?
「……いや、そうか。彼は彼らを彼と同じ方法で強くしようとしているのか!」
「かれが多いですよ。ってか、今更気づいたんですか?」
「あ、あぁ。でも、それは不味いんじゃないか? 第二、第三の彼がどんどん生まれていくんじゃないな?」
「あーそれは大丈夫ですよ? 彼らは彼の意図に気づいていないから本気で第一層をクリアしようとしているんです。だから、どんどん死ぬまでのタイムが伸びているんです。つまり、死亡回数が絶望的に足りないんですよ」
あっ、なるはど。強くなるともがけばもがくほど、死と強さから離れてしまっているのか。なんと皮肉なことなんだろうか。
だが、私たちが心配する必要はなさそうで安心した。それに、彼らはどちらにせよ天魔大戦までだからな。万が一のことも無さそうだ。
「ちょ、ちょっと先輩!? か、彼がなんか物凄いことをやっちゃいましたよ??」
「も、物凄いこと、だって?」
「はい、まず彼は彼の魔術である死骸魔術でスケルトンを召喚しました。この理由はよく分かりませんが、その後になんとかなりの魔力を注ぎ込み、召喚を発動しました」
かなりの魔力を注ぎ込んで召喚を行った? そんなもの結果は一つに決まっているだろう。
「なんと、獄界序列、四位のネームドNPCのヴァールを召喚してしまったのです!!」
ほらな、大量の魔力を使って召喚を行ったらそりゃ、無茶苦茶強い奴が来るだけだ。
「……獄界序列、四位!?!?」
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お待たせしました。待っててくださった皆様、ありがとうございます。皆様のおかげです。
これから頑張ります。
今日は皆さまの小さな幸せを教えて下さいな♪
私は飯を食う時かも
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