第351話 馬鹿な天才


「え、あ! ちょ、先輩! 彼がPKに襲われてますよ!?」


「え、PK?」


 おいおい一体何してくれてるんだ? 彼に喧嘩を売るなんて馬鹿がすぎるだろう。どうやっても勝てないんだぞ? それこそさっき悪魔がタイマンで負けたんだから、そんな簡単に戦うなよー。


 って、言いたいけど他のプレイヤーからしたらそんなこと知らないもんな。はぁ、でも彼に触れることで彼の強さの一端を知ってしまうと、って思うと少し怖いな。


 彼は常にソロで、彼の強さの源がどこにも漏れないからこそ、ある種安心して——と言うわりには毎回寿命を縮めさせられているが——見てられるのだ。そこに誰かが来るなんてもう、本当にやめて欲しいんだが?


「ちょっと状況を教えてくれないか?」


「はい。まず、そのPKは今日もう既に何人か殺めていたようですが、彼を見つけ次第、彼に刃を振るいました。その剣は正確に彼の首筋に届きましたが、もちろん彼の物理攻撃無効によって防がれました」


 まあ、そうなるよなー。そしてこれでどうせチートだのなんだろって言ってくるんだろ? 自分から魔王に手を出しておいてそれはないぜ、って言いたくなるが、まあ仕方のないことでもある。


「でも、問題はこれからです」


 え、まだ問題じゃないのか? もう既に私の目からすれば問題しかないように思えるんだが?


「なんと彼、攻撃されたと思ってなくて、自分からそのPKに接触してしまったのです!」


「はい?」


 彼から接触、だと? それだと大きく話が変わってくるんじゃないか? だって、首に攻撃されてるのに気づいてないってそれはもう、ば……いや流石によくないか。ちょっと違うのではなかろうか。


「そして、そのPKのアバターが小さい男の子だったため、迷子と勘違いしてそのまま家に送り返してしまったのです! こんなこと普通ありますか? 自分の命を狙ってきた相手に対して親切丁寧に家まで送るって!」


「か、彼は普通じゃない、からな……」


 いかに私といえどもこの言葉を出すのが精一杯だった。ここまでくるともはやなんと声をかけて良いのかわからないな。それに一周回って彼のことが天才に思えてきた。


 今思えばどんな行動も全て意味ある行動だったのだ。今回のことも必ずなんらかの意図があるに違いない。


「あ、それに、送ってあげるときに彼の鳥型従魔に乗せてあげたんですよ? 相手がNPCならまだしも、そんなことします!? いや、彼はNPCとかプレイヤーとか気にしていないんでしょうけど、それでも、ねえ?」


 いや、彼女と言わんととすることも分かる。分かるのだが、理解できないことに対して批評するのは誰でもできるのだ、そうではなくて、そこにどんな意味を見出すか、どんな意図が隠されているのか考えることが重要なのではなかろうか。


 そして、その後結局何事も起きぬまま、時間だけが悪戯に過ぎて行った。


 やっぱり彼は馬鹿なのかな??





——————————————————

今回は皆さんが好きな装備(見た目)というざっくりしたテーマでおうかがいしたいと思いますよろしくお願いします。


私が好きな装備は本編で出てきたやつみたいなのですかね(ざっくり

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る