第352話 城の防衛
「えー! こ、これはなんですか、これは!」
朝、出勤して開口一番に後輩はそう言った。まあ、彼女が大声を出すことは別に珍しくない、というかもう当たり前の領域にまで来ているから他の社員は特に反応しない。
だが、私が反応しないと無視したという言いがかりを付けられてご飯に連れて行かれることとなる。もちろん代金は私もちで、だ。だから私は何か面倒臭いことがあると知ってても彼女に話しかけねばならんのだ。
「ん、どうしたんだ?」
「いやちょっとこれを見てくださいよ!」
そういう彼女が指すモニターを見てみると、そこには綺麗に整列されたサメの列が出来上がっていた。そして、その前には一際大きい九つ首の龍の姿も。
「なんだこれは?」
「先輩、これ、なんと魔王城の第一層なんですよ?」
「こっ、これが第一層!?」
いやいやいや、だってこれは誰が見ても明らかにやりすぎじゃ無いか? だって、ただでさえ水没してて普通のプレイヤーでは動きが制限される、どころか溺れ死んでしまうというのに、それに加えてこの量のサメが配置されてたら、もうほぼ無理ゲーだろう。
こんなにきちんと整列しているってことはそれだけ統率が取れているってことだろうし、フォーメンションを組んでこられたりしたらもういよいよ勝ち目はないぞ?
そして、そこにあの龍だろう? 彼はダンジョンというものを知っているのだろうか? 普通は徐々に難易度が上昇していくものだろう? いや、普通を彼に求めてはダメだとは知っているが、それでも、それでもだなぁ。これでは一般プレイヤーが挑戦する気すら失せてしまうのではないか?
「先輩、聞いてくださいよ、これだけじゃないんです!」
いやもう聞きたくないぞ。もう何度これを繰り返せば良いんだ? 彼がいる以上もう逃れられない運命なのかもしれないが、もうそろそろ落ち着いても良いんじゃないだろうか? これは私のエゴなのか……?
「なんと、この龍、元々は九重魔龍だったんですが、サメをたくさん統率していたからか、いつの間に九重魔鮫龍になってたんです!」
おいおい、魔龍だけでも強そうなのにそこに鮫の要素が加わってはダメだろう。龍と鮫、どちらも強いイメージが持たれているが、それぞれ交わるところは見たことなかったが、まさかここで交わることになるとは……
「恐らくですが、彼は天魔大戦に向けてお城の防衛力を固めているのだと思われます」
「防衛力? 戦争を城の中でするのか?」
「いえ、そうではなくて戦争中はお城に滞在することができませんからね。それに、彼としても多くの戦力を城から外に出すはずです。ですので限られた人材で城をまもる必要性が出てきます。つまりはそういうことなのではないでしょうか?」
なるほど、それなれば一理あるな。これが永続的なものではなく、天魔大戦が始まって終わるまでの間であれば、別に問題はないだろう。それに、多くのプレイヤーもて大戦の方に参加してくれるだろうからな。
ということは私の取り越し苦労だったということだな。
はぁ、取り越し苦労の方が安心する、って私ももう末期だな。
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魔鮫龍はマコウリュウって読みます!意外とかっこいいですよね?
皆さんが思うカッコいい名前、名称、言葉はなんですか?教えてください!
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