第348話 前後門


「あ! 彼が王城へと侵入しましたよ!? こんなに易々と侵入できるもんなんですか? お城のセキュリティどうなってるんですか全く!」


 おいおいお城にセキュリティを問うなんて、無粋そのものだろう。綺麗な絨毯や煌びやかな装飾の中に監視カメラとかあったら興醒めだろう? それに、仮にあったところで彼は止められない。


 いや、でも美術館にあるような赤外線のセンサーなら置いても怪しまれないか?


 って、そうだ。ここは別にリアル志向じゃなくてなくていいんだったな。この世界には魔法という素晴らしく都合の良い存在があるって後輩に教えてもらってたのすっかり忘れてた。


 んー魔法でセキュリティをするってなると探知魔法とかか? でも魔法を発動してるってことはそれだけで相手にも感知される可能性が出てくるよな? ならどちらにせよ彼を捕捉するのは無理だな。


「ん、そもそもなんで彼は王城にいるんだったっけ?」


「え……そ、そりゃ悪魔退治ですよ! 初っ端に捕まっちゃって忘れてしまったかもですが、本来は悪魔を捕まえるためにここにきたんですよ? ですからまあ当然こうなるわけですよ」


 いやいや、こうなる訳ですよ。とかいう割には彼が王城に入った時はそこそこ驚いてたじゃないか。それに、さっきも少し動揺して答えるのにタイムラグがあった。つまりは彼女も完全に忘れていた他というわけだ。


 確かに自分も犯したミスを他人が犯していたら過剰に攻めたくなる気持ちは分かる。だが、それをしてしまうと結局自分にも返ってくるからな。ほどほどにしておいた方がいいのだ。まあ、彼女の場合は私だから何をしてもいいと思っている節があるのだろうな。


 うん、私は大人だから寛大な態度で許してやるのだがな。


「あ、城の一室に入りましたね。ここには一人の人間しかいませんね。もしかして、この人が悪魔、ってことなんですか!?」


 悪魔は人間に擬態して裏で社会を操る組織だ。そのくらいしているのだろう。ってか、国の中枢に悪魔に入られるって別の意味でセキュリティが甘いな。前門の魔王、後門の悪魔ということか?


「おっと先手必勝、彼が早速仕掛けました! もしもこの人が本当に人間だったら、という思考回路はないのでしょうか!? 容赦無く雨叢雲剣を使いました!」


 最悪、人間でも蘇生すればいいやとか思っているんだろうな。それに、確かな情報を元にその人が悪魔だって確信しているから攻撃しているのだろうし。


「えーっ! き、効いていない!? 彼の雨叢雲剣が効いていないですよ先輩!? 悪魔ってそんなに強いんですか??」


 え、まさか、私も彼の一撃で余裕で倒れると思っていたんだが。悪魔ってそんなに強いの?


「あ、今度は不動之刀を使いました! でも、効いてない。斬法十四手も! き、効いてないですよっ!? 彼の猛撃をここまで耐え抜いた敵ってこれまでいましたっけ? こ、これは流石の彼でも不味いんじゃないですか??」


 そんなことあるのか? 彼は最強のエンドコンテンツなんだぞ? こんなところで負けるはずが……いや、悪魔は元エンドコンテンツだ。それ相応の意地があるのだろう。もしかしたら、今この瞬間、このゲーム内で一番アツい戦いが行われているかもしれない。


「あ、悪魔がとうとう攻撃の準備に入りました! え、武装演舞、ですって? なんですかその強そうな技は! これ、彼いよいよまずいんじゃないですか!?」


 さあ、どうしてくれるんだ? 魔王様!








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