第343話 確蟹


「あ、どうやら模擬戦はもう終わりみたいですね、てっきり全従魔と戦うとでも思っていたんですが……まあ、その方が良かったのかもしれませんね」


「ん、なんでだ?」


「だって、模擬戦だと彼の強さに加えて従魔の強さまで露呈してしまうじゃないですか。いつもなら彼だけなのに、二倍の気苦労を強いられるんですよ? だったら早いとこ終わってくれた方がありがたいってもんですよ」


「それもそうだな」


 私は彼女の問いかけに対して、無意識に質問してしまったのだが、言われてみれば確かにそうだな、というものだった。彼の強さは言わずもがな、彼の従魔も一級品の強さを誇っているからな。本当に勘弁願いたいものだ。


「ん、次はどこにいくかと思っていたのですが、どうやら自分の寝室に向かうようですよ?」


「寝室?」


 それはリアルの、ではないだろう? 寝室なんてどこにあるんだ?


「はい、魔王城にある寝室ですよ。彼の場合はそこがリスポーン地点になるんですからね。でも、なんでそこに向かうのでしょうか。リスポーンもしくはログアウトする以外で何か使用法ありましたっけ?」


 あぁー、それも確かに言われてみればそうだな。お城、に豪華な寝室は付き物な気がする。でも、大概そういうのが出てくる時って女性モノのイメージが強いよな。男性モノには需要がないからなのだろうか?


 それで、寝室への用、かー。確かに、彼女のいう通り、リスポーンやログアウトに使用する以外、特に用はないように思えるのだが、彼の場合何か別の使用法を見つけたのだろうか。いくら彼と言ってもそんなこと可能なのか?


 あ、いや、もしかして……


「彼はそのリスポーン機能を使う為に来たんじゃないのか? 新しい方法を見つけるのは難しいが、本来の使用法から外れた使い方なら容易にできる、かもしれない」


「ん、それはどういうことですか? リスポーンはするけどその使用法が普通と異なるってことですか? どうやったら、そんな状況に、あ……」


 どうやら彼女も気づいてしまったようだ。彼がこれから行うかもしれないことを、そして、我々が見ているスクリーンの上で、彼が自殺を開始した。


 ❇︎


「センパーイ、これいつまで続んですか? かれこれ何時間も死に続けてますよー? それに、首がポロリと落ちるから見てて気持ち悪いんですけどー」


 彼女が不満を垂れる。まあ、それも無理もないだろう。彼がずーっと死に続けて自分を強化しているのを、こちらはただ指を加えてみているしかないのだから。


 せめていつものように絵面が変わってくれればいいものを、今回は絵面どころか行動すら全く一緒だ。こんな反復作業をよくもまあ続けられるな、と私は感心するばかりだ。


「なんで私たちがこんなグロ動画をなんでみ続けなきゃいけないんですかー?」


 いや、嫌ならみなければいいだろう。なんて一言はぐっと抑える。少しでも不満が溜まっている彼女に油を注ぐ真似は愚行としか言えないからな。ここはスルーが最善手だ。


「あ、彼が漸くスキルを獲得しましたよ! なになにー、欠損無効に、再生っと。……再生!?」


 再生!!??









——————————————————

痛風鍋を食べてみたい。


というか、そろそろ鍋の季節ですね。


今日は投稿できてよかったです。

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