第341話 クモちゃんの力


「あー、どうやらまた配下と戦うみたいですよ? 次はクモちゃんを相手にするようですね! まさか、またもやクモちゃんの方から訓練を申し出るとは……ちょっと彼の配下、バトルジャンキー過ぎませんか?」


 またもや模擬戦か。まあ、これは我々が彼の従魔の強さを判断する良い機会となるだろう。前回のイベントでもその実力の一端を見ることはできたが、相手が一般プレイヤーだとどれだけ数がいても一方的な蹂躙になってしまうからな。


 何はともあれ魔王と配下の手合わせは貴重な瞬間なのだ、一瞬たりとも逃さずに情報を取得するのだ。


「おっと、早速試合が開始しましたね。初手はクモちゃんによる糸の放射攻撃、ですがこれはなんなく彼に避けられてしまいます! クモちゃんもそれは想定内で、糸の放射を陽動に使い、自らの姿を隠した様です!」


 こちらの戦いは先程とは打って変わり、高度な駆け引きが序盤から行われているようだ。確かにクモの配下——これからは後輩同様クモちゃんと呼ぶ——はアシュラの様に圧倒的な攻撃力は持っていない。その代わり、隠蔽技術や奇襲攻撃など、搦手に特化している。


 本来ならば面と向かっての一対一には向いていない戦法だが、それがどこまで通用するかが見ものになりそうだ。


「ここで彼は、探知系スキルでもある叡智啓蒙を発動します! これで相手を捕捉しようとしますが、ん? ど、どうやら反応がいくつもある様ですね。あ! なんとクモちゃんが配下生成をし、ダミーの反応を既に用意していた様です! なんと高度な戦いなんでしょう!」


 こ、これは確かに凄いな。普通に気配を殺して姿を晦ませるだけでは彼の探知に引っかかってしまう。だからこそ、自分の姿を消しつつ、ダミーの反応に紛れてさらに自身の影を薄くしている。これは素晴らしい芸当だ。


 何もない所に違和感があれば、それはすぐに発見できるのだろうが、違和感しかないところからさらに細かな違和感を見つけるのは至難の技だ。それこそ昼に光る星を見つけるようなものだ。しかも、クモちゃんの場合は、それを強調するためにあえてダミー反応を粗くしている。昼の光を強くしている、ということだな。


 彼の力を信頼しているからこその対応、こんなところにも主従関係が見える様な気がして、またもや逆説的に彼の強さが窺える。


 そして、私が知っている彼はこんなものでは立ち止まらない。


「おっと、ここで彼がさらに探知系スキルにリソースを割くみたいです! 深く意識を研ぎ澄ませ、反応を精査しているように見えます!」


 そうだ、彼はいつも想像を超えていく。想像を超えてくると知っていて対策してもそれを超えてくるのだ。


 今回の場合、反応を一つずつ確認することによって、クモちゃんの位置を割り出そうとしているようだ。ここで、反応を粗くしたことが裏目に出てしまったようだ。反応が荒ければ一つ一つ仔細にみられれば直ぐに偽物だと分かってしまう。


 まあこれは仕方のないこととも言えるだろう。なんせ、試合が始まって一瞬の出来事なのだ。しっかり準備ができる暗殺とはまた一味も二味も違う。


 しかも始まってすぐにクモちゃんは糸を放ち陽動を繰り出しているその間に偽物のダミーを大量にばら撒き姿を隠せただけでも凄いと言えよう。


「あぁーっとここで彼がクモちゃんの居場所を見つけた様です!」


 まあ、そうなるような。彼が探り当てるのは時間の問題だ。


「その反応に向かって彼は全力で蹴りを入れるっ!」


 ってか、今思ったんだが何故彼女は実況口調なんだ? いやまあ以前にもそういう姿は見たことあるがそういうのは大体イベントの時にやってくれるものだろう? それだけ彼女も注目しているってことか?


「あれ? 彼の蹴りを食らったのどうやらクモちゃんじゃないみたいです! こ、これはどういうことだぁー!?」


 んん? ど、どういうことだ? 彼はクモちゃんの反応を見つけたんじゃなかったのか!?






——————————————————

やはり誰かさんと違って戦いが地味じゃないですね()


あと、今回の話の中に私が好きな曲のフレーズが入っています。一部訳されているので分かりにくいですが、わかる人は分かるかも!?


アニメや漫画小説だけでなく、音楽とかでも素敵なフレーズがあったら使いたいー!ってなっちゃうんですよね。。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る