第339話 逆説的な強さ


「お、彼と配下の多腕モンスターのアシュラくん、なかなか良いバトルを繰り広げてますね!」


 多腕モンスター!? って、その配下はアシュラというのか。シンプルな名前だが、それだけに強さと特徴がダイレクトに伝わってくる良い名前だな。そして、名は体を表すというように、その名前がさらにモンスターを強くしているのだろう。


「にしても、アシュラくんもなかなか強いのにも関わらず彼は余裕な表情で対応していますね。これが魔王の威厳ってやつですか! 現実にはいないのでとても参考になりますね!」


 いやいや魔王が現実にいたら色々と困るだろう。まあ、魔王のような人はそこそこいるのかもしれないが。


 にしても、確かに良い戦いを繰り広げていると思う。彼に対してこれだけ食い下がっているのは素直にすごいことだと言えよう。


 三対の上でから繰り広げられる連続攻撃というだけでも強力であるのに、その腕の一本一本がサイの突進のような威力を放っている。オリジナルの阿修羅像は腕や体は細いイメージだが、このアシュラはもっとゴツゴツしていて非常にマッチョだ。


 その、在らん限りの筋肉を使った攻撃は非常に強力でそれだけで並のモンスター、プレイヤーなら倒れてしまうのだろう。


 だが、戦いを見ているとそれだけが武器ではないように思える。むしろ、強みは別のところにあったのだ。


 一見、その風貌から強力無比な一撃を警戒してしまいそうになるが、その反面、本当に恐るるべきものは、三対の腕からなるコンビネーションだ。


 例えば人間と同じようにアシュラが右ストレートを放ったとしよう。本来ならばガードか回避だろう。そして回避ならばさらに幾らかの選択肢に分岐するはずだ。アシュラはそれらの可能性を潰しながら攻撃してくるのだ。


 まず、ガードの選択肢、これは強力な一撃を持つアシュラを相手にして一番避けたい選択肢だろう。であるからこれはまず選ばない。仮に選んだところで粉砕されるのがオチだからな。


 となると考えうる選択肢は回避一択なのだが、それでも様々な避け方がある。左右に大きく避けたり、逆に必要最低限に回避しないこともあるかもしれない。だが、それらの回避のいくつかは次弾の拳によって潰されているのだ。


 それに気づかず回避を選択すればその瞬間、回避後という一番脆いタイミングに合わせられて詰む、ということだ。


 もちろん、全ての可能性を潰せているわけでは無いが、それでも相手に好きに行動させないだけでも大きなアドバンテージになる。一つの腕でも意識から抜け落ちればその時点で勝てるアシュラの強さは全く名前負けしていないと言えるだろう。


 それに、仮に避けたとしても、三対の腕から繰り出される連続攻撃はなかななのにに手強い。一度も選択を誤れない弾幕ゲームみたいなものだろうか、それも、アシュラを目の前にずっと正気を保っていることは難しいだろう。大抵の生物はすぐに撃沈してしまうだろう。


 そして、仮に避け続けられる天才が現れたとしよう、それでもまだアシュラには届いていないのだ。反撃ができないからな。延々と攻撃を繰り出せるということは攻撃されないということでもある。攻撃は最大の防御を地でここまで行うとは大したものだ。


 こんな相手に立ち向かえて、あまつさえ勝ちうる存在といえば、アシュラを目の前にして一切の物怖じをせず、さらに反撃することのできる強者でなければならない。


 そんな存在、がどれだけいるというのだろうか。


 だが、アシュラが戦っているのはまさに、そんな存在なんだよな。


 まあ、魔王だから当たり前なんだろうが。はぁ、アシュラの強さを認識すればするほど逆説的に彼の強さが浮き彫りになってしまう。全く、恐ろしい存在だ。






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アシュラはシンプルに強い存在であるため、他の従魔たちに比べて影が薄いんじゃ無いかな、と思って盛大に解説させていただきました!


アシュラもなかなかやるでしょう??一応、この子も古参メンバーですからしっかりと強いのです!٩(♡ε♡ )۶


しかも、ここでは載っていませんが、彼には武器もありますよね……?


彼が強いと思った方は是非、コメントよろしくお願いします!

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