第338話 金と銀
「あ、ちょっと先輩! なんか彼が急に配下と戦い始めましたよ!?」
「な、何っ!?」
配下と戦闘だと? 仲間割れか? いや、でもまさか彼に限ってそんなこと起こりうるのか?
彼は称号によってある程度NPCの好感度に補正がかかっている。確かに下降補正がかかる称号も持っていた気はするが、トータルで見れば余裕でプラスだったはずだ。それなのな何故?
いや、勿論、好感度は絶対的なものではない。酷い言葉を投げかけたり、無下に扱ったりと態度によっては覆ることも全然ある。
だが、それもかなりのことをしなければならない。彼の好感度を消し去ってさらにマイナスに到達するにはどれだけの所業をしないといけないんだ?
それに私が見ている限りでは彼はそんな酷いことを行っているようなは見えなかったんだが……
「なぁ、彼は一体何をしたんだ? 仲間割れ、じゃなくて謀反が起きるほどのことを彼がしたのか?」
いくら考えても答えらしきものすら得られなかった私は後輩に答えを求めた。彼女なら私よりも多くのデータを持ち、より精度の高い答えを出してくれるだろう。
だが、彼女の答えは私の予想を遥かに上回るものだった。
「え、何言ってるんですか? 仲間割れ、謀反、裏切り?」
いや、裏切りまでは言ってないぞ? 勝手に補完するのはやめて欲しい。まあ、間違ってはないから何も言えないのが辛いところだな。
「なんでそんな結論に至ったのかは分かりませんが、彼らの仲は悪く無いですよ? むしろ良すぎるくらいですよ」
「仲が良い、だと?」
「ええ。配下と戦闘って聞いて真っ先に裏切りが出てくる辺り先輩の育ちが分かるってもんですね」
いやだから裏切りは言ってないって。補完するのは別に良いが、補完したものだけをベースに話されたらそれはもうほぼ嘘だぞ?
それに、たった一言で人の育ちとな価値観を判断するのは良く無いことだぞ。これはしっかり指導しないとな。
まあ、これに関しても図星たから何も言えないのだが。
「仲が良すぎる、とはどういうことなんだ?」
「はい。彼と配下は実力アップの為に戦闘しているようです。しかも、その誘いをしたのは配下からのようです!」
「配下から誘って……?」
「強くなりたいから主君に手合わせ願うってなんと素晴らしい配下なんですかね! しかも、それに快諾する彼も彼ですよ! これの仲が良くなければどの関係を仲良しっていうんですか!」
お、おう。そうだったのか。にしても急に熱意が凄いな。そんなに熱くなれることか??
でもまあ確かに配下の方から実力アップの為に手合わせをお願いした、というのは意外だったな。
配下と戦闘と聞いて、謀反を想像してたんだが、まさかの訓練とはな。流石に好感度がゼロになることは無かったか。まあ、それもそうだよな。
彼は主としても一流だからな。不満などないのだろう。あぁ、私にもそんな上司がいればなあ。
今私にできることといえばそんな理想の上司になれるよう努力することくらい、か。
「それにしても先輩、仲間割れ、謀反、裏切りってどういう思考回路したらそうなるんだすかぁー? ぷーくすくす」
落ち着け、落ち着くんだ私。後輩は明らかに私を怒らせようと煽ってきている。ここで怒ってしまえば彼女の思う壺だ。
私は理想の上司になるためここでグッと堪えねばならない。忍耐こそ大人の仕事なのだ。
「あれ、先輩何も言わないんですか? 沈黙は金なり主義ですかぁー?」
そうだ。沈黙は金、雄弁は銀だ。それを後輩に教えてやらねばならんのだ。
「じゃあ先輩、今からステーキ食べに行きましょ! いいですよね? 沈黙は肯定ってことですもんね!」
「ふぁっ!?」
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やったー!今日も運営編投稿できたー!
褒めて褒めてー!私は褒めて伸びる子なのだっ!!
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