第336話 人外職業


「あ、彼がお城の最上階に自身の配下を全員集合させましたよ? 何をするつもりなんでしょうか? 天魔大戦に向けて演説でもするんですかね?」


「演説……?」


 もしかして魔王って選挙で選ばれているのか? いや、流石にそれはないか。配下がいて魔王が生まれるのではなく、魔王だから配下がいるのだ。


 いや待てよ。でも、彼も最初から魔王だったわけじゃない、むしろただの一般プレイヤーだったはずだ。それは最初の配下ができた瞬間もそうだ。一体、二体と配下を増やしていく中で魔王へと至ったのだ。


 いや、そもそも彼はシステムの上では魔王では無いのだ。現状彼が大衆に向かってそう名乗っているだけだ。まあ、それが大きな意味を持つのだろうが、彼が実際には魔王では無いことになる。


 そう考えると魔王とは一体なんなのだろうか。一般的な定義としては魔人、魔物の王、というところだろうか。その定義からすれば彼は魔王では無いことになるのだが、それでも彼は魔王と自称している。


 そもそも職業ってなんなのだろうな。


 私たちが生きている世界であれば、お金を稼いでいる業種がそれに当たるのだろうが、それは必ずしも一つとは限らない。これをゲームに当てはめると、お金を経験値と捉えることができるだろう。


 だが、一つだけではない、というのは現実と沿っているのだが、ゲームの場合はその業種において稼げているわけではない。あくまで経験値を稼ぐのは自分の能力で職業はその手助けに過ぎない。


 んー、なんだか泥沼の思考に陥っている気がする。元々、彼が演説を始めたところからの思考のはずだ、一旦浮上しよう。


「それで、彼は皆を集めてなんて言ったのだ?」


「あ、本当に演説しているみたいですよ? 天使襲撃に向けて軍の士気をあげると同時に皆にそれぞれの強化を指示しているのでしょう」


 流石に相手が天使ともなればいくら彼といえども何も準備しないで立ち向かうのは厳しいということだろう。まあ、妥当な判断だな。何もしなくても良い勝負はできると思うが、準備をすれば勝利はより確実なものとなる。


「あ、でもそれだけじゃ無いみたいですよ? 一人一人にバッチのようなものを配布しています」


「パッチ? 何か修正するのか?」


「修正パッチのことじゃありません! ってか、バッヂですバッヂ! 何らかのエンブレムが入っているやつです! まだちゃんと見えては無いですが、結構しっかりしててデザインも格好良さげですよ!」


 エンブレムかー。


 エンブレム、紋章はそのものが所属する団体を表すものだ。つまり、彼が配下達に魔王軍を正式に名乗らせようとしている、ってことだ。


 その目的はもはや一つしかない。対天使を見据えてのことなのだろう。自分の所属団体を表すことはそのまま、自分たちの団体を意識することに繋がり、結果的に帰属意識が生まれる。


 帰属意識が皆に生まれれば、その帰るべき場所を守る為に団結力が高まる。倒すべき敵が明確であればあるほど、団結力は高まるだろうから、天使という分かりやすい敵がいる今、魔王軍は更に強化されたと言ってもいいだろう。


 こう言った類の精神論は眉唾だと思われがちだ。確かにそれはあながち間違いではない。ただ、それらが確実に作用するもの達がいるのもまた事実なのた。


 あれこれ手を尽くしての強化ではなく、エンブレムという一手だけで今までにない強化を軍全体に施すとは、もう脱帽の域だろう。


 リーダー、参謀、育成者の面を持ちながら圧倒的な強さも兼ね備えている。


 こんな人外ともいうべき存在に天使はどうやって勝つのだろうか。


 というか、そもそも勝ち目なんて存在するのか?







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お久しぶりです!


まだまだ余談は許されない状況ですが、幾分かはマシになってきたかもです!


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