第334話 後輩の手柄
私が変な虚無感に襲われていると、後輩が戻ってきた。そういえば彼女の用事とはなんだったのだろうか。何か重要なことがあるのならば教えてもらいたいのだが……
「ん、どうしたんですが先輩。そんな物欲しそうな顔をされても何もあげませんよ?」
「いや、そうじゃなくてだな」
「はいはい、私が何をしてたかが気になるんでしょう? いやー先輩も気になるならそんな顔しなくても直接聞けば良いのにー」
こちらから聞くのもなんとなく憚れるから目で訴えかけていたのだが。どうやら私の考えは筒抜けだったようだ。まあ、この状況であれば誰でも分かることか。
「それで、何だったんだ?」
「はい、ちょっとイベントの準備を進めてたんです」
「イベント?」
「はい! どうやら天使の方で面白そうな動きがあったらしくてですね。どうせなら他のプレイヤーも巻き込んで一大事にしてあげようかと思いまして!」
思いまして! って笑顔で言うことでもないだろうに……
それより、天使で面白い動き? なんだか不穏な空気しか感じ取れないのは私だけか? それになんだから後輩が悪い顔をしているように思えるぞ?
「それで、どんなイベントになる予定なんだ?」
「えっ、イベント内容ですか? もーう、特別ですよ? まだプレイヤーには告知してなくてちょうど今から告知するところなんですから!」
「い、今から? って、別に私はプレイヤーじゃないのだから良いだろう。さ、教えてくれ」
「はーい、イベントの名前は題して、天魔大戦、です!」
「天魔大戦!?」
「そうです! 天使と魔王の戦い、つい最近その姿を見せた魔王と、天使という普通のプレイヤーならみたこともない存在が戦うのです! そして、なんと、プレイヤーたちはこの両者のどちらかについて戦争に参加することができるのです!」
戦争に参加って……戦争にはなるべく参加したくないだろ普通。まあ、ゲームの世界だからだろうが、全く、無茶苦茶すぎるだろう。
しかし、天魔大戦かー。これはなんだか面白そうだな、さっきの不穏な空気は恐らく気のせいだったのだろう。うん、きっとそのはずだ。これは良いイベントになるんじゃないだろうか。
「ふふー、先輩、なんだか楽しそうな顔をしてますね! でも、私が考えたんですからね! 大成功したら私の手柄ってことで、私の給料ドカーンとあげちゃってくださいね?」
「いや、お前だけの手柄ではないだろう。見たところ、どちらかというと他の奴らに任せてたみたいだし」
「うぐっ、そ、それは……」
「まあ、イベントの結果次第では美味しいお店に連れて行ってやるよ」
「本当ですか!? やったー! これは焼肉決定だー!」
そんな後輩の様子を見て、私は今回のイベントは間違いなく、成功すると確信した。
そう、この時までは。
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天魔大戦の結果、皆さんなら既にご存知のことでしょう……
南無
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