第331話 蛸使


「って、彼が堕天使たちを堕天蛸使にしている間に戦闘が終わっているんですが!? ちょっと交代した従魔たち強過ぎませんか?」


 堕天蛸使、か。三体をまとめて呼ぶのにぴったりな名称じゃないか。流石は後輩だな。こう行ったさりげないところでもセンスをひけ散らかしてくる、しかも無意識でだ。あ、これは勿論、褒め言葉だぞ?


 私にはセンスがないのでな。私もセンスを無意識に広大なスプリクラーのように散布させたいものだ。


「って、天使の中ボスクラスの奴は倒すどころか完全に生捕にしちゃってますよ!? そんなに余裕だったってことですかね? ちょっとこれは、思ってたよりも彼の戦力は大きいようですね」


 まあ、それは言うまでも無いだろう。彼の力はもう私たちの手の届かない、遥か彼方にまで行ってしまっている。そしてそれは従魔に関しても同じことだ。どんなものでも無限を掛けてしまえば無限になるように、彼の配下は強さが発散してしまうのだ。


 ちょっと自分でも何を言っているかよくわかっていないが、つまりはそう言うことだ。


「ん、ここで彼が心臓を抜き取って終わりと思いきや、どうやらこの中ボスに今しがた製造が完了した堕天蛸使を投入するようですね。試運転のつもりなのでしょうか。戦力を確かめる、といった意味もありそうです」


 まあ、大方そんなところだろうな。それに作った武器は今すぐ試したくなるものだ。そう言う意味では製造官僚もあながち間違いでは無いのかもしれない。天使に我々の倫理観が適用されるかは分からないが、天使を武器と扱うのは可哀想だが。


 ん、そういえば蛸って音読みだとなんと読むのだろうか。ダテンタコシ、と読むのは流石にちょっとダサいだろう? それはセンスのない私でもわかることだ。


 ささっと調べてみるとショウとかソウとかって読むらしい。つまりダテンショウシ、ダテンソウシ、うん、ダテンソウシの方が個人的には好みだな。これからは脳内でそう呼ぶことにしよう。


「お! 中ボス相手にいい感じに戦えてますよ! 三人一組でそれぞれの個性を活かすことで十分すぎるほどの戦力になってます! ただ、擬態があまり活用できてないのが残念と言ったところでしょうか? まあ、どちらかといえば奇襲や偵察などの隠密行動に向いているでしょうから、仕方がないと言えば仕方のないことですね」


 ふむ、でも墨と言うのは毒でもあるが、視界を奪うための煙幕にもなるだろう? それと擬態を組み合わせれば戦いの最中であっても使える武器にはなると思うのだが。まあ、別に私から彼らに助言することでもないか。


 というか接点をどう足掻いても作れないだろうしな。


 にしても墨と吸盤、そして擬態を自由自在に操られれば確かに結構きついかもしれないな。そもそも敵が一体であればその時点で一対三の構図になってしまう。数の有利はそれだけで覆し難い大きな差になる。


 その上で厄介な武器があるんだ。これもまた彼の貴重な戦力になるのだろうな。唯一の救いがあるとすればまだ体術やコンビネーションといって基礎的なことが高水準にはなっていないことだろうか。まあ、いずれそれらも彼の手によって高みへと昇華させられることだろう。


 だが、こうしてみてみると、、、


「でも堕天蛸使って他の従魔に比べるとどうやっても見劣りしますよね? 三人で一体分とは言ってもそれでも戦力的に見ても弱いですし、なんていうか、その、格が足りなくないですか?」


 そう、まさしくそれだ。強さに関しては彼さえいれば後からどうとでもなるんだろうが、現段階での格、覇気、オーラと言ってもいいかもしれない、それが足りない気がするのだ。


 それらは後からついてくるものなのかもしれないが、んー何故だろうな。


 元からいる彼の従魔たちも最初からオーラが出ていたわけではないから、これから身についていくのだろうか。


 彼らには是非、そのままでいてもらいたいものだ。






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本編ではちょうど600話あたりの内容になっております。


600って言われると600族が出てきます。

600族っていいですよね、知らない方の為に軽く説明すると、めっちゃ強い奴らのことです。


強いって、かっこいいですよね。

と言うことで皆さんが思う強キャラを教えてくださいな!

私は……誰だろう、ヒースクリフ?()

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