第325話 彼の気づきと相変わらずの妄想


「あ、先輩。三体の天使に同士討ちさせて残った一体を彼は服従させましたよ? さてはこれが狙いだったんですかね?」


 ん、服従、したのか? でも、少しおかしくないか? だって、戦力的に言えばその中の三体よりも、断罪絶刀で倒した天使の方が上位だったはずだ。戦力増強の点から言えばソイツを服従させたほうがよかったんじゃないか?


 でも、それはそれでそもそも彼の従魔のメンツを考えるとわざわざこの天使たちを服従させるメリットがないように思える。彼の従魔と比べると明らかに目劣りするからな。と言うことは、その天使を服従させたのは戦力目的ではない、と言うことか?


「あ、先輩。彼、残りの二体も蘇生して服従させましたよ? こー、これはどう言う意図なんでしょうか……?」


「え、蘇生して服従!?」


 あまりの内容に思わず声を出してしまった。今まで彼は無駄に見える行動を一切取ってこなかったように思う。


 それなのにここに来て急に不可解な行動を彼がとってきた。いや、不可解な行動という点においては最初からそうだったが、今回はどう見ても明らかに無駄な行為をしたように思う。だって最初から服従すればよかったはずなのだから。


 ならばなぜ彼は同士討ちなどさせたのだろうか。


 一つ考えられるのは敵の強さを測りたかった、と言うものがあるかもしれない。自分の手を汚さずに敵同士戦ってくれれば大凡の強さが窺える。


 もう一つは選定の試運転をしたかっただけ、と言うものだ、まあこの二つは相反するものではないから両方という可能性も大いにあるのだが、もしこの理由だった場合に、なぜ完全に倒れるまで、HPがゼロになるまで戦わせたのか、という疑問が残る。


 蘇生する手間は客観的に見て必要なかったはずだ。


 それに、戦力的に考えればこの三体を従えてた天使の方が強いのは前述のとおりだ。


 つまり、彼が蘇生をしたこと自体がこの一連の行動の手がかりとなる、ということだろうか。もしそうであるならば、蘇生をするまでは彼は服従させる気はなかったのではないか?


 そして、途中で何かに気が付き、慌てて蘇生し服従した、そう考えれば合点はいく。


 問題となるのは何に彼が気がついた、ということだが……


 もしかすると彼も私と同じ、四匹目の猿、いや四体目の天使の存在を思いついたのではないだろうか。三体が揃っていて初めて四体目が現れると考えれば、その三体を自分の手駒にしておこう、というのは彼の思考回路としては自然な流れかもしれないな。


 それなら戦力拡充のためではない、からより上位の天使を服従しなかった理由にもなる。なるほど、彼は目先の利益ではなく、将来獲得しうる可能性に賭けたと言うわけか。


 どうやら彼は先見の明も持っているらしい。いや、持っていないと今までの所業で説明がつかないことが山積してしまうか。


 とりあえず、スッキリしたし飯でも食いに行くか。


 え、飯ばっかり食ってないか、って? いいんだよ、三猿の中に食わざるは入ってないのだから。





——————————————————

主人公「え、なんとなくっすけど」(※593話あたりを参照


明日は久しぶりのお出かけ、少し気分が舞い上がっております。もちろん、時間も短く、最小限の食事だけなのですが……


皆さんはコロナが明けたらどこに行きたいですか?私はとにかく一人カラオケに行きたいです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る