第324話 泡沫の願い
「せ、先輩。天使は名をミエル、イエル、キコエル、というらしいですよ、ぷぷっ」
おいおい、何笑ってるんだ。まあ確かに面白いことを否定はしないが、個人的に良いセンスをしているとは思うぞ?
天使っぽい名前にするために名前の最後をエルで統一し、天使感を演出する。更に三人一組であることを生かして、三猿の見ざる、聞かざる、言わざるをモチーフに上手く構成されている。
しかも、「ざる」という打ち消しだったのが可能の表現に変更され、天使の全能感をこそっと示しているのも評価が高いだろう。それに伴って、どことなく馬鹿っぽい印象を感じるのも天使の抜けてる感を演出しているのだろう。
細部まで計算されて名付けられたこの名前は私は素晴らしいと思うぞ?
しかも、現実世界に三猿は完全体ではなく、実はもう一人の猿がいる。その存在も天使として出てくるのだろうか。もしそうであるならば尚更面白い存在だ。
でも、そんな愛情が深くかけられていそうな天使たちに対して彼がどのように対応するのかが楽しみだな。もちろん、彼はそんな裏の事情なんて気にしないだろうし、気にする必要もない。
「あ、先輩。彼、さっき手に入れた魔王勅命で三人に同士討ちを命じましたよ!? 彼ってやっぱり容赦ないというか、慈悲がないというか、サイボーグみたいですね」
サイボーグか、あながち間違いでもないだろう。悪魔、魔王、サイボーグ彼を形容するにはどんな言葉でも足りない、そんな気がする。もちろん、当てはまる言葉は沢山あるのだろうが、沢山あることによって一言で言い表すのが難しくなっている、そんな感じだ。
それにまさか同士討ちさせるとは思っても見なかった。圧倒的な火力で一瞬にして倒すと思っていたからなおさらだ。まあ、彼としては試運転の意味合いが大きいのだろうが、彼ら三体の天使はサンドバッグにしかならなかったのだろう。
まあ、彼らじゃなくてもサンドバッグになっただろうし、逆にサンドバッグにはなれたことに対しては褒めていいのかもしれない。
「あ、でも同士討ちさせた三体の他にその親だまみたいな天使がいますよ! それはどうす……断罪絶刀で一刀両断ですか。改めて選定人は頭のおかしいスキルを渡したものですね」
「あぁ、それは間違いないだろう」
にしても天使をものともしない強さだな。以前、悪魔と戦っていた時はもっと苦戦していたように見えるが……
仮に天使と悪魔が同格としても彼がものすごく成長したということである。細かな階級の差は分からないが、天使が悪魔に大きく劣っている、とは考えづらいだろう。
彼は刻一刻と進化し続けている。それに付随するかのように従魔も強く強化されていっている。
プレイヤーたちももっと追い込まなければもういくら束になっても勝てないのではないだろうか。いや、もう既にその状況に陥っていると考えるべきか。
ま、それでこそラスボスが務まるというわけだが、攻略される日はくるのだろうか。
もはや、ゲームの攻略を彼が行い、それによって強化された彼を倒す戦い、にゲームの内容が変わってしまうかもしれない。
頼む、頼むからもうちょっとゆったりしてくれないだろうか……
そんな私の小さな願いはもちろん、スクリーンの向こうには届かない。
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今日は正直諦めてました。でもなんとか投稿することができました。
ですので皆さんには私を褒める人になっていただきたいのです。どうかお願いできないでしょうか。
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