第322話 彼に勝つには

ギリギリアウトか!

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「次の選定は一騎当千と千本桜、ですね。どちらも千という数字が付くという共通点がありますが、それ以外は特に相違点すら見つけられないくらい、違う畑、といいますか別ジャンルのように思えますね」


 確かに、今まではそれとなく繋がりがあったり、はたまたギロチンカッターと聖槍のようにきちんと対比されている場合がほとんどだった。にも関わらず今回は文字だけの繋がりしかないように思える。


 まあ、それが選定の結果にどのように作用するのかは私たちの知るところではないが、気になる部分ではあるだろう。


 もしかしたら共通点が少ない意外な組み合わせの方が思わぬ化学反応で強力なスキルが生まれるかもしれない。ただ、その分失敗するリスクも高まってしまうのだろうな。それを見極めるのも選定人の仕事、ということなのだろう。


 一人でスキルを選ぶこともできるみたいだが、まあオススメはしないのだろうな。


「あ、できましたね。スキルは……一花繚乱!? 百花じゃないんですか? なんか、違和感がすごいですね。効果は、巨大な一輪の花を咲かせ、その花弁で周囲に向かって攻撃する。たった一輪の花だけの狂い咲きはまるで大樹のざわめきのように周囲の生を刈り取ってしまう、らしいですよ、先輩」


「ほう……」


 一輪だけの狂い咲き、か。本来ならば狂い咲きとは季節外れに花が咲くことなのだが、この場合は違うのだろうな。文字通り本当に花が狂ってしまったように花開くというのだろう。そしてそれが周囲の命を刈り取るという。


 まさに、一人で多くのプレイヤーの命を刈り取る彼に相応しいスキルと言ってもいいだろう。


 にしても一花繚乱とは、唯一と言っても良い共通点の千ではなく敢えて片方ずつから要素を拾ってきた、という感じだな。一騎当千の一と、千本桜の花と咲き乱れている様、それらが組み合わさってこのスキルが生まれたのだろう。にしてもこの選定人は良い仕事をするものだな。


 普通、このスキル同士を掛け合わせようとは思わないのではないだろうか、独創的な着眼点だと言えるし、それが見事に成功している。素晴らしい仕事ぶりだ。


「あ、そういえば彼以外がこのスキル選定を使う可能性はないのか?」


「んー、あるかないかで言えばあるんでしょうが、今のところ誰もその情報を手にしていないようですね。もはや彼がどのようにしてこの情報を入手したのかすら忘れましたが、彼は情報収集能力もピカイチということなんでしょうね」


「そうだな」


「力でも情報収集でも勝てないとなれば彼に勝てるのはなんなのでしょう?」


「んー、敗北回数とか、か?」


「それはもう完全に敗北しちゃってるじゃないですか!」


「まあ、それもそうだな」


 彼に勝とうと思うこと自体難しい話なのだ。これくらい許して欲しいものだ。






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こっちも短めですごめんなさい!

明日から頑張るので長文コメントよろしくお願いします!!

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