第320話 選定力
「み、分身とぶんしんのじゅつで、分け身というスキルが誕生しましたね。これは分身と何が違うのでしょうか?」
分身で分け身、か。単純というか安直というか、それで良いのか?
「あ、でも効果はしっかりしていますよ? 自分の体の一部を使って分体を生成するらしいです。分体は半永久的に活動する、ってちょっとこれはやりすぎなんじゃないですか?」
あ、本当に体を分けて身にするんだな。それならまあ、納得だな。でもなんとなく名前の後に効果が決まってるような印象を受けるのは気のせいだろうか。
「あ、あぁ。確かに半永久的は少しまずいな」
でもまあ、体の一部を使っているから妥当なのだろうか。永遠に生み出し続けることも不可能、いや。仮に現実世界だったら無理だが、ゲームの世界であれば回復することができる。ということは無限か?
ま、ま、まあ無限に生成しても管理が追いつかなくなるだけだから気にしないでいいだろう、多分。
「あ、でも各地に分体を配置しまくって、全員を隠遁させれば一瞬で諜報部隊が完成しますよね? そしてテレパシーで情報交換をすれば、え、最強じゃないですか?」
「いや、でもその分体も人間であることには変わりないだろう? それぞれ自律行動させるにしても、得られる情報には限りがあるだろ?」
「確かに、いやでも全部の情報を吸収する必要はないんですよ? 大まかな情報をキャッチして、目ぼしいアイテムやクエストがあれば回収、消化する、という流れだったらいけますよね?」
「……そ、そうだな」
「はぁ、ぱっと見ネタスキルなのにこんなに強いなんて……彼は本当に強さそのものに愛されているんじゃないでしょうか」
強さそのもの、か。あながち間違ってないというか、否定できないのがまた辛いところだな。もはや彼が強さの権化と言ってもいいんじゃないだろうか。
「まあ、切り替えて次見ますかー。流石にまだまだ続くでしょうし……」
いや、切り替えたところで次が私たちにとって都合の良いスキルになるかどうかはまた別の話だぞ? それに、恐らくそうならない可能性の方が高いだろうし。
「つーぎーはー、どうやら言霊と呪言扇動のようですね。……これ、見るからに絶対よくない結果になりますよね? 言霊を持った呪言扇動、しかもそこに選定の謎エネルギーがくるわけでしょう? これは確定演出ですね」
ほら、言わんこっちゃない。ま、まあ仕方のないことだな。人が希望を持ってガチャを回すように、私たちも希望を持って彼の行く末を見守っているのだ。もはや人間の性と言ってもいいくらいだ。希望がなければ人は生きていけないのだから。
「あ、結果が出ました。魔王勅命、らしいです。効果は見なくても分かりそうですが、一応確認しますね。えーっと、非常に力の籠った言葉を放ち相手の行動を決めることができる、自分の配下であれば完全服従させられるが、支配下にない者に対しては、ステータスの差によって成功確率が決定される。また、相手が状態異常であればあるほど同様に確率は上昇する、ですって。なんかごちゃごちゃ言ってますけど彼のステータスを考えるとふっつうにぶっ壊れですね、はい」
女性がぶっ壊れとかいう語彙を使うものなのだろうか、そして使って良いものだろうか。
まあ今更ではあろうが、目を瞑っておこう。それに、個人的には思ったよりも魔王勅命が強くない気がする。スキル名でハードルが上がっていただけかもしれないが。
それにしても私としては一刻でも早く選定が終わって欲しい。これが続く限り彼の強化は止められないのだから。
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【緊急】選定した後なのに、呪言扇動を使っている可能性があります。589話以降で呪言扇動を見かけた場合、お知らせください。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
実は結構、使うことができないはずのスキルを使っちゃったことがあります。今もまだ他のスキルで時空の歪みが発生している可能性があるので、気づき次第お知らせしてくださると嬉しいです!
ま、まあ報告がないってことは皆さんも気にしてないか、無いってことでしょうけど!(¯―¯٥)
(調子に乗ってごめんなさい
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