第319話 二度目の選定


「ん、先輩、彼何してるんですかね? 自分で自分のお城に攻略していますよ? まさかとは思いますが自分でデバッグまでしているわけではないですよね?」


 いや、流石の彼でも自分でデバッグをするとは考えにくいだろう。なんせ、システム的なことに関してはゲームの中からはどうしようもないからな。ゲームの中というのはプログラムの結果に過ぎない。結果から過程を弄ることができたらもはやパラドックスになり得る。


「でもまあ、自分で攻略してみないと分からないことを確認しているんじゃないか? ダンジョン攻略には抜け穴が付き物だからな。あとは、全体を通して体験し俯瞰で見ることによって何かを探そうとしている、とか」


「万が一にもクリアさせないつもりですか……徹底していますねー。ゲームとしては攻略できるちょっとした希望みたいなものくらいあってもいいものですが。まあ、彼のダンジョンには似合いませんね」


 彼のダンジョンにちょっとした希望があった所で気休めにもならないのだろうな。


「あ、え、彼が急に城から飛び出しましたよ? もう強化はしなくても良いのでしょうか? まあ、側から見たら十分すぎるくらいの防御力は誇っていますが」


「流石にもう十分じゃないのか? 彼もこれ以上強化した所で労力に見合わないと判断したのだろう」


「まあそうですよね、って、え!? ここって、確か、スキル選定してくれる場所じゃなかったでしたっけ?」


「スキル選定?」


「ほら、スキルを統合してさらに強くするアレですよ! 問題なのが、足し算じゃなくて掛け算ってことなんですけどね。あと、プラスで彼が持っている素材が強すぎるってのも重要です」


 ふむ、分かりにくいのだが要約すると、スキルとスキルを足し算ではなく掛け算することによって大幅に強化する、スキル選定というものを、強すぎるスキルを沢山携えた彼が行うってことだな。


 うん、どう考えても、いやもはや何も考えなくてもやばいことになるのは目に見えてるじゃないか。これでまた彼の強さにブーストが掛かってしまう。彼の強さはスキルだけではないが、その大部分をスキルが占めていると言っても過言ではない。


 それが大幅に強化されるのだから、彼自身も相当強くなるのだろう。城の強化が済めば今度は自分の強化か。全く、余念が少しも見受けられないな。真面目というか、貪欲というか……本当に未知数な存在だ。


「あ、早速選定を行いましたね。今回は闇視と夜目で闇眼ですか……二つとも暗い時の視力補正だったはずが、それに加えてバフもかかるようになってますね。これが選定の力、掛け算することによって無からエネルギーが生まれてますね!」


 無からエネルギーが生まれている、かー。まあ確かにそう見えるのも仕方がないか。だがまあそうでなくては恐らく選定する意味がなくなってしまうのだろうな。なぜなら単なる足し算であれば二つ同時に使えばいいだけなのだから。


 闇視と夜目の場合は少し分かりづらいが、二つのバフスキルで考えれば一目瞭然だろう。つまり、彼女の言葉を借りるのならば、無からどれだけエネルギーを引き出せるかによってこの選定の成功か否かが決定されると言っても過言ではないだろう。


 そう考えると今回の場合もバフの効果がどのくらいかによってまた話が変わってくるな。


「そのバフっていうのはどのくら


「あ、二つ目の選定が始まりましたよ! 次は分身とぶんしんのじゅつ、ですかー。どこかふざけた印象も受けますが、一体どうなるのでしょうか?」


 あ、こりゃダメだ。彼女が完全に選定に夢中になってしまってる。これは何を言っても届かないんじゃないだろうか。


 まあ、確かにこの選定も魔王城と同じように彼の行く末を決める大きな一つとなるだろう。注目することに越したことはないな。


 ん、だったら尚更彼のスキルについての情報がもっと欲しいんだが?






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先日は休んでしまって申し訳ありません。

今日は二話投稿したかったのですが、昼寝をしてしまい……

なんとも不甲斐ないです。


そんな私に♡を恵んではいただけないでしょうか?

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