第317話 彼が見据える物


「にしてもこんなのよく考えましたよね〜」


 ん、この流れは改めて私を褒めてくれるのか?


「この骨二人組のコンビネーションを活かす為に魔法陣を設置して、自分達だけでなく敵すらも位置を変えることのできる層にするなんて、頭いいですよねー! しかも、彼らは自分たちの装備で自前の転移もできるから、挑戦者が慣れてきたらそれを使って、一気にケリをつけられるという、性格悪すぎステージですね!」


 んー、褒められているのか、貶されているのか相変わらず分からないが、自分でも鬼畜なステージを作ったしまったという自負はある。


 彼らの素材を十分に活かしたい、と言う思いと、他の層にも引けを取らない様にしたい、と言う思いが重なった結果だな。八層目であるから下の層よりも難易度を高めたかったのも事実だし、十分な出来だろう。


「で、次が九層目ですかー。いよいよ大詰めですね最上階は彼がいるでしょうから、残りの従魔を考えるとあの鳥型のモンスターがいるんでしょうけど。って、え? 誰もいない?」


 そう、この第九層にはモンスターどころか何も存在しない。あるのはただ、闘技場のような広いスペースだけだ。しかし、それすらも下の階にある闘技場に比べればシンプルな造りになっている。


「な、なぜここだけこんな簡素な内装なんですか? まだ未定、と言うわけでもないですよね?」


「あぁ、この上の第十層、いや最上階はもう既に完成しているからな」


「なら、なおさら何故ここだけ……」


「恐らく、で申し訳ないのだが、私が推測するに、彼はこのダンジョン、この城において不確定要素を導入したかったのではないだろうか」


「不確定要素、ですか?」


「そうだ。この城もどれだけ難易度が高かろうが、いずれは何度も周回されてどんどん攻略される、そんな日が来ることだろう。そんな時に、対策しづらい不確定要素があるだけで最上階への守りは一気に固くなる。どれだけパターンがあるのかも分からないまま、挑戦者は行き当たりばったりの戦いを強いられることになるのだ」


「な、なるほどー。確かに彼が考えそうなことでありますが、現段階でこの城が一層でも攻略される可能性があるでしょうか?」


「そ、それはー……ない、な」


「ですよねー。なら彼は一体何を想定してこんなに守りを固めているんでしょうね。他のプレイヤーが強くなったところでどうせ彼の方がそれ以上に強くなっているでしょうし」


「そ、それもー……そうだな」


「でも、彼が何の考えもなしにわざわざ時間とリソースを割いてここまでするとは考えにくいじゃないですか? 絶対に何かある筈ですよ、この城を守らなければならない理由が!」


 ふむ、確かに彼女の言うことにも一理はある、か。だが、誰でも自分の城をゲットしたら守りを強固にしたいと思うんじゃないだろうか。彼の場合、それが常軌を逸しているだけ、と言う可能性もあるかもしれない。


「もしかして、彼の敵はプレイヤーじゃなくて、NPCという可能性はありませんか?」


「はっ!」


 その可能性は完全に排除してしまっていた。それは本来のプレイヤーとして正しい在り方だ。プレイヤーなんかよりもモンスターをモンスターよりもさらに恐ろしいのは悪魔のように知能を備えたモンスターだ。


 彼の意識はそんなところにある、ということなのか。お、恐ろしい……一体、誰と戦うつもりなんだ?






——————————————————

その後、彼は天使と閻魔と戦います。(悪魔はもう少し後です


自分も誰が攻めてくるでもない、城の守りをガッチガチに固めたいと思っております。


共感してくださるか方、よろしくお願いします。

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