第314話 重言と重箱
彼一人で軍と言っても差し支えないほどの戦力、その全てがこの魔王城へと注ぎ込まれている。そして、その力を十全に引き出すように、形作られたこの城は正にホーム。地の利を生かした彼らの力を止めることは最早できないだろう。
「せ、先輩。まだこれで三層しか見てないんですよね? お、恐ろしい、恐ろしすぎます! でも、確かにこれは知らずにいることの方が恐ろしいですね。つ、次にいきましょう、次はどの従魔が待ち構えているのでしょうか」
気づけば彼女が攻略しているかのような口ぶりだ。恐らく、それだけ彼の城が彼女の前に立ちはだかっているのだろう。内容を確認しているだけの彼女であれなのだ。プレイヤーはどのように感じるのだろうか。心が折れなければいいが。
「あっ! こ、ここは極寒の冷地になっていますよ!? ってことは、あの氷魔法を使うワンちゃんの層、ってことですか!」
極寒の冷地って重言になっていないか? 極めて寒い冷たい土地、ってんーギリギリセーフか?
「そ、そのようだな」
「あれ、でもワンちゃん以外にはモンスターはいないみたいですよ。それだけワンちゃんを信頼している、ということでしょうか。まあ、確かにあの強さは以上というか、見た目とのギャップ地獄ですもんね」
ギャップ地獄とは? なんだか今日は全体的に日本語が危ういな。それだけ彼女も彼の城にやられているのだろうか? にしてもそれだけで母国語が疎かになったりするだろうか?
「あぁ、あの魔法の威力、効果範囲、どれをとっても一級品だからな。それに、色んな種類を持っていることも脅威だ。あれだけの魔法を敵によって使い分けられると考えただけでも苦しい戦いになるだろう」
「もう、次! 次行きましょう! そんなにじっくり見たからといってこの層が弱くなるわけないですからね!」
それもそうだな。むしろ見るだけで弱くなってくれたらどれだけ良いだろうか。それなら私たちの思うように難易度調整ができるからな。まあ、私たちの手に負えない不確定要素を導入することで更なる面白さを狙っているのだから、それもそれでお門違いだな。
「次の層は……ま、マグマ!? あ、あのマグマ人間の階層ですか! 寒冷の層を抜けると灼熱のエリア……もう、誰にも攻略させる気ないじゃないですか。この温度差だけで数人は死んじゃいますよ!?」
それが冗談じゃなく、本当にあり得そうなところがまた怖いところなんだよな。まあ、死にはしなくても霜焼けのような現象が全身で起こることは間違い無いだろう。全く、細部にまでびっしりと殺意が込められているな。
「し、しかも道が飛び石になってる!? あれは下が砂利や草だから成立するんですよ? それをマグマとか日本の伝統に喧嘩でも売ってるんですかね?」
い、いやー流石の彼でもそこまで喧嘩を売っているつもりはないだろう。仮に売ってたとしてもそれはプレイヤーまでだな。
「た、確かマグマ人間の従魔はマグマと同化することができますよね? そしてそれを操って攻撃する。つまりは、自らの体が武器がそこら中に落ちてる、というか無限にある、ってことですよね? ただでさえ熾烈な環境なのに、鬼です。この城の城主はただの鬼ですよ!」
た、確かにそうだな。この難易度は鬼と言って差し支えないな。だが、彼女の説明に一言付け加えるとするならば、このマグマは、体と武器だけで開く、避難場所にも活用することができる。普通の生物であれば触れることすら許さないそれは、そこに潜られるだけでプレイヤーは手も足も出ない。
そこでいくらでも回復することができよう。
この城は連戦形式なのだろうか。一階層ごとに一旦帰れるようにしたり、攻略を中断できるようにしないと、本当に攻略不可能なダンジョンになるのではないか?
んー、永遠に攻略できないダンジョン、か。悪くないな。
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私の口癖、というか物語中によく出てくる表現なんかはありますか?
ある作品を見ていたところよく出てくる表現があったので私にもあると思いまして…笑
また、皆さんの口癖も教えてくてください!٩(♡ε♡ )۶
私の口癖は……なんでしょう?
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