第313話 負けず嫌い
「お、おい大丈夫か?」
「だ、大丈夫か、ってこの状態の私をみて本当にそう思いますか? 大丈夫なわけないですよね? こんな頭おかしい狂った城を見せられたら誰でもこうなると思うんですけど」
ちょっと口が悪すぎるな。女性の口から出て良い言葉とは思えないのだが。
「まあまあ。それよりもまだ二階層までしか見ていないぞ? この城は全十階層だ、残りの階層は見なくても良いのか? 確かに体調が悪かったらもうやめておいた方がいいか、たったの二層でもう限界らしいからな」
「はい?」
お、やる気になってくれたようだな。彼女は奇想天外な行動しかとらないのだが、これだけ一緒にいれば、条件さえ整えばその行動を操ることは簡単なのだ。とは言ってもただ単に負けず嫌いを刺激する、ってだけなんだが。
「いいですよ、そこまで言うのであればしかとこの目で見届けましょう! しかし、私が最後まで立っていられたならばまた寿司、奢ってもらいますからね!」
なんでそうなる。
でもまあそうだよな、彼女の場合、負けず嫌いを刺激すると必ず対価が発生する。それは負けず嫌いを意識させた時点で勝ち負けが存在する勝負事に切り替わり、勝負事には対価が必要と考えているからだ。なんとも物騒な話だよな。
だから、彼女の負けず嫌いを刺激する際には財布の重量に十分に気をつけてもらいたい。その舌は私から奪い去った数多の金銭でこれ以上なく肥えているのだから。
でも、ただ最後まで彼の城を見るだけで寿司が食べられるなんて随分な御身分だな。まあ、彼女にその情報を入れておいてもらうことは、それ位のリスクがあってもさせるべきことではあるからな。じゃじゃ馬を操縦するのは本当に一筋縄ではいかないな。
「じゃ、じゃあ三層目から行きますよ! もう、特殊な従魔はいませんから特に驚くこともなく、私はお寿司を獲得するでしょうがね!」
ふふ、どうかな。彼女は一つ思い違いをしているようだ。確かに、九重魔龍は水棲モンスター魔法を使える特殊なモンスターだ。そしてゾンビスライムはその生い立ちからして同じく特殊だ。そう、この二体が特殊なのは間違いのないことなのだ。
だが、だからと言って残りの従魔たちが特殊ではない、ということにはならないだろう? むしろ彼とより長い時間を過ごしているのだ。彼と過ごす時間が長ければ長いほど特殊になるとは思わないのか?
「なっ! こ、これはっ……! ど、毒!?」
そう、第三層はその階層の至る所に毒液がぶちまけられた、言わば毒の湿地。その階を守護するのが亀であるから、水陸両方の地形が存在するのだが、その水部分は全て毒液と言うなんとも悍ましい階層。
そして、陸地に広がるスモッグ。これは従魔が息を吸う度に綺麗な空気を汚して吐き出しているのだ。最早、その亀モンスター以外の全ての生物を拒むかのような階層になっているのだ。仮にプレイヤーがここに到着したところですぐ様その汚染された空気にやられ、毒液にやられ、亀にやられてしまうことだろう。
「よ、容赦ない……! 水中エリア、無限増殖エリアに続いて毒エリアがくるなんて! 彼はプレイヤーに攻略させてあげようと言う気は無いのですか?」
そりゃまあ城を建設する時点でその城が落とされることを考えながら作る人はいないだろうよ。
「そ、それに一階層に一体の従魔。つまりこれは……!」
お、彼女もとうとう気がついたようだな。そう、これは、この城は、
「「彼の軍事力の集大成!」」
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私も幼い頃は負けず嫌いでした。しかし今は……
いや、意外にも負けず嫌いかも知れない。発動される場面は限られるでしょうけど……(・∀・)
なんとか間に合ったので、褒めて遣わしてくださいな、よろしくお願いします!!
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