第312話 完全構造
「な、なんじゃこりゃあああ!!!」
後輩は翌日オフィスに着くなり、突如としてそう叫んだのであった。
彼女は恐らく、彼が建設した魔王城に対して驚いているのだろう。まあ、それも無理はない。なんせ、私も今日、ここに来た時には似たような反応をしてしまうほど驚いたのだからな。
「ちょ、は、え!? 見た目に関しては私たちが用意しておいたものとほぼ一緒ですが、内装が、内装がおかしいです! 全十階層ってどんな鬼畜仕様なんですか、えぇ? それに、一番の問題点、それは第一層から水中エリアってどういうことなんですかぁー!!??」
ふむ、やはり私と同じくそこに目を奪われてしまったか。彼の大胆すぎる発想は私たちの想像力をはるかに超えてきた。まさか、魔王のダンジョンであるその城の第一層が水中エリアだとは誰も思うまい。
このことから何人たりともこの城には入れない、招かない、そんな強い意志が感じ取れるほどだ。それに、
「それに、なんですか、この水中モンスターの量は! どのモンスターも結構強めのモンスターばかりではないですか! そこらのダンジョンなら中ボス張っててもおかしくないレベルですよ? それがここでは第一層のモブ扱いって……」
このゲームにラスボスとして君臨する魔王、その城が簡単に攻略されてはつまらないだろう? という彼からの挑発のようなこの城の難易度、一層目から一切の容赦がないこの構成には流石の彼女も驚きを隠せないようだ。
だが、まだこれは第一層に過ぎない。そんなテンションでいってたら最上階までもたないんじゃないか?
「ま、まあいいでしょう。彼も魔王城建設に当たってかなりの気合が入っているのでしょうね、それが十分伝わってきましたよ、えぇ。そりゃ魔王様が簡単に負けることほどつまらないことはありませんからね! うんうん、これくらいじゃないと!」
あ、今、自分に納得させるかのように言い訳してるな。まあ、気持ちは分からんでもないが、この調子だと、次の階層も……
「って、えー! ちょいちょいちょいちょい! なんですかこの手抜き階層は! 気合入ってるんじゃなかったんですか!? 何にもないじゃないですかー! この魔王城も一層だけ完成させてあとはもぬけの殻ってことですかー?」
「まあまあ落ち着くのだ。この階層を誰が守っているか知れば彼の考えている事も分かるかも知れないぞ?」
「こんな状況で落ち着いて、、、誰が守っているか、ですか? 確かに、先程の階層は彼が最近従魔に加えた九重魔龍がフロアボスとして立ちはだかってましたね。ここは……ぞ、ゾンビスライム!?」
「あぁ、恐らく彼の考えていることはこうだ。国別対抗イベントでも見せたゾンビスライムの増殖機能を存分に生かし、挑むものが増えれば増えるほど、攻略が難しくなる階層にするつもりなのだろう」
「挑むものが増えれば増えるほど、攻略が難しくなる階層、ですか?」
「敵を倒して自分の手駒に加える。その手駒たちも同じように新入者たちを自分の仲間にし、どんどんとそれこそウイルスのように感染させていくのだろう。ここにまだ何もないということは、これからどんどんと埋めていく、というつもりなのだろう」
「そ、そんな恐ろしい階層が二階層に……!?」
そう、何よりも恐ろしいのはこの階層が水中エリアである第一層の先にある、というところだ。必死の覚悟で水中エリアを抜けた先にあるのは、文字通り地獄絵図、阿鼻叫喚のステージ。第一層を抜けた猛者たちがそっくりそのまま敵へと変わってしまうこの階層は、恐怖以外の何者でもないだろう。
第一層、二層共に侵入者の全てを拒む構造になっているのだ。そこに一切の隙も油断も見えない所が彼の恐ろしいところでもあり、味方として安心できるところでもあるな。
「も、もうギブ……」
彼女はそう言ってオフィスを離れた。
おいおい、もうギブって今出社したばかりだろう?
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この話は本編565話あたりになります!!
甘いものが食べたい気分でございます。
誰か私に糖分を……皆様のお好きなスイーツはなんですか?
私はアイス大好き人間ですが、甘味全般いけるオールラウンダーです。
圧、倒、的、甘、党、です!!!
♡もよろしくお願いします!!!
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