第311話 チェックな裁量権


「あ! 先輩、まだ仕事残っているじゃないですか!」


 後輩がほっぺをひとしきり落とした後、突然、そんな言葉を発した。


 この場合、文字通りオフィスに仕事が残っている可能性も考えられるが、個人的にはその可能性は低いと思っている。なぜなら完全に今は私も彼女もオフモードだからだ。そのため、ここでの仕事とと言うのはまさに、まだ寄るべきお店がある、といった類のものだろう。


 個人的に今日はもうお開きムードであったため、この後もまだあるのか、と少しブルーな気持ちになりかけもしたが、今日の主役はあくまで後輩だ。せっかくだから花を持たせてやろうと思い、話を聞くことにした。


 いや、普通は先輩に花を持たせるだろう? なんで私が後輩に花を持たせてるんだ? ……と言う話は一旦脇道に置いておこう。


「仕事、とは何なんだ?」


「え、仕事って言ったらアレですよ、あ、れ! そう、魔王城の建設です!」


「は?」


 もし、ここが個室でなければ相当な奇異な視線を集めていたことだろう。突如、魔王城の建設です! とか言ったら痛いにも程があるだろう。


「って、魔王城の建設!?」


 がっつり仕事じゃないか! まさか、このタイミングで本来の仕事を思い出すとは意外と後輩、しっかりしているのか?


「って先輩、そんな大声で魔王城の建設とか行っちゃったら皆んなから変な目で見られますよ? 大人なんですからしっかりしてくださいよ、もーう!」


 お、ま、え、が、言、う、か!? ま、まあ確かに私の不注意であったことは認めよう。しかしなぜ私だけそんなことを言われなければならないのだ。おかしいだろう、これは訴えても許されるのではないだろうか?


「と、とりあえず、それなら今からオフィスに戻らないとだな」


「えー、それはそれで嫌ですねー。あ、そうだ、何も私たちが一から十まで建設する必要はないでしょう? それに、自分のお家は自分で作った方が絶対に愛着湧くでしょうし、そうだ、そうしよう! 彼に作らせましょうよ! 彼が一から十まで私たちにお願いする、と言うなら従いますし、彼にも選択権はあったほうがいいでしょう?」


 ぐっ、確かに。案自体はとても素晴らしいのだが、素晴らしいが故にその案が生まれた理由というのがオフィスに戻りたくないから、というのが引っかかるな。


 この素晴らしい才能をオフィスにいる時に発揮してもらいたいのだが……


「いやー、もしそうなったらどんなお城を彼は作るんでしょうね? 何回建てにするのかも気になりますし、内装もどんな感じにするんでしょう? 意外と派手好きですかね? でもそんな豪華絢爛なイメージは失礼ながらないんですよねー」


 きゅ、急に饒舌になったな。でも、一つ言えるのは、彼に城の裁量権を全て与えることによってとんでもないものが生まれる、というのは間違いないだろう。


 その上で彼がどんな創意工夫を凝らし、プレイヤーたちの脅威となるのか、それが楽しみで仕方がないな。


 彼女の言動にはいくつか不満点はあったものの、最後の一手全てをひっくり返すこの能力がやはり凄いと言えよう。まあ、この才能がなければ即刻クビまである案件だが。


「よーし、じゃあオフィスに戻る必要も無くなったので、二軒目行きますかぁ〜!」


「……」


 結局、梯子するのかよ。





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お腹すいたから、蕎麦食べよ。


皆さんの好きな麺類を教えてくださいませ♪

もちろん、その麺類の中でも一番好きな料理まで答えていただけると嬉しいですっ!(≧▽≦)

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