第310話 上からの誘い


「はふぅー、これでようやく大型プロジェクトが終わりましたね! いやー存外疲れちゃいましたよー」


 いやいや、まだプロジェクトが始まったばかりなんだけどな。これからどんな障害が待ち受けているのか分からないし、未知の迷路を切り開いて行かねばならない。その苦労を分かっているのだろうか?


 まあ、彼女の場合は私の思いも寄らない方法で解決してしまうのだろうな。彼女もまた、彼と同じあっち側の人間なのだから。


 そんな彼女でも今回のプロジェクト指導にはかなりの体力と精神力を消耗してしまったみたいだ。上司として少しくらいは労ってやるか。


「よし、じゃあ飯にでも行くか。イベントも今すぐ始まる訳じゃ無いだろう? まあ、始まったところで今の状態じゃ誰一人として彼には勝てないだろうがな。飯はどこがいい?」


「え、め、珍しいですね。先輩から食事のお誘いなんて、明日はひょうでも降るんですか?」


「おいおい、夏が終わりかけとは言ってもまだまだ暑いぞ? それとも何か? 飯に行きたく無いのか?」


「い、いえ! 滅相も御座いません! 喜んで午餐に御同行させていただきます!」


 彼女はバッと立ち上がり、ビシッと敬礼をした。


「うむ、よろしい。では、どこいこうか。まさか、牛丼というわけではあるまいな?」


「クックック、先輩、もしかして牛丼が安い料理の代表格、とお思いですか? 巷で最近のA5ランクの牛丼をご存知でない? そこではA5ランクにも関わらず、その肉の旨みを冒涜するかの如く濃い味付けを行い、賛否両論を受けながらも一部のコアターゲットに向けて数量限定で販売しているのです!」


「ほう、面白い。では、そこにこの私を連れて行こうというのかね?」


「いや、やっぱり寿司で」


「え?」


「いやーやっぱり仕事納めは寿司に限りますよー! お肉もいいですが同じ値段でも高級感を感じられるのはお寿司ですからね! それに、今はコッテリよりさっぱりしたものが食べたいので! ビネガーを感じたいのです!」


 こういう時にズゴー、とでもいえばいいのだろうか。ここまで綺麗に掌返し、に含まれるかは分からないが、予想を裏切られるとは思ってもみなかったぞ。にしても、A5ランクの牛丼というのはなかなかに興味がそそられるな。今度一人で食べに行ってみようかな。


 あ、でも場所知らないし、店名も知らないから彼女に聞かねばならないな。でも、彼女に聞いた時点でついてくることは決定事項な訳で……


 ま、ご縁があれば何か拍子にいけるだろう、きっと。


「分かった。では、私のおすすめのお寿司屋さんにでも行くか?」


「え!? 先輩のオススメですか!? まさか回転寿司じゃ無いでしょうねー?」


 ジトー、という視線が送られてくるが、そんな訳はない。いや、これは決して回転寿司を下に見ているとかではないぞ。あの値段であのクオリティを出せることはとても素晴らしいと思う。それにビジネスとしても非常に素晴らしいモデルだと思う。


 だが、上には上がいるし、方向性も変わればもはやそこに基準なんてただ一つしか存在しなくなる。


 そう、美味いか、不味いか、だ。


「ふっ、私も甘く見られたものだな。そこのお店で顎を外しても知らないからな?」


「ほっぺが落ちる、の間違いじゃないですかー?」


 いいだろう、軽口を叩けるのも今のうちだ。








——————————————————

秋、秋がいつの間にかやってきたぞー!


空があっという間に暗くなりますね!

暗い空を見て哀愁を感じておりました。秋という字がはいっているのはやはりそういうことなんでしょうな。


なんてことを考えながら浸っております。

私も歳をとったのでしょうか…秋の切なさを理解する時が来ようとは、、、

でも一番好きな季節は秋です!よろしくお願いします!

では、また明日!!

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