第306話 野暮急用


「にしても彼は思いっきりやっちゃってますねー! あくまで第三勢力、しかもたった一人だけっていうのにも関わらずここまでの成果を出すとは、予想以上の成果なんじゃないですか!?」


「うむ、確かにそうだな」


「え、なんでそんなに反応薄いんですかー。結構重要なことですよね? それとも彼がこちら側に来てくれることなんてどうでも良い、ってことですか?」


「い、いやそういうわけではないぞ?」


 そういう訳ではないのだが、少しやらなければならないちょっとした仕事が溜まっているのに先程気がついてしまったのだ。今更仕事に戻るとも言いづらいし、私の頭の中はそれでいっぱいになってしまったのだ。


 そんなに緊急性が高いって訳でもないのだが、今のうちに済ませておいた方が良いのは間違い無いのだ。だからこうして少なくない私の意識が持っていかれているのだが……


「ふぅ、全く。どうせやらないといけない仕事でも思い出したんでしょう? やってきて良いですよ。私もちょっと野暮用を思い出しましたし、また三十分後にまた戻って来ましょう。では」


 お? なんか随分あっさりと解散できたな。何故だろう、彼女が私に気を使って野暮用を捏造したとは到底思えないし、本当に彼女も彼女でやらねばならないことがあったのだろうか。また後で聞いてみるか。


 って、今はそうじゃなくて後の平穏の為にも今は全力で仕事を片付けなければ!


 ❇︎


「ふぅー、終わったー」


 時刻を見るとちょうど二十五分が経過したところだった。なんとか間に合ったようだ。神様がくれた、いや彼女がくれた千載一遇のチャンスをなんとか物にできたようで本当によかったな。それにしても、


 私は先程のモニタールームに戻りながら考える。


 今までイベントの観察を一旦中止にしたことなどない筈だ。それなのにも関わらず彼女の方から中断を申し出るほどの野暮用とはなんだろうか。


 もちろん、私に気遣った可能性もゼロではない。ゼロでは無いのだが、残念ながらその可能性は限りなく低いということを私は知ってしまっている。


「お、先輩も今ちょうど戻って来たところですか? タイミングバッチリですね!」


「お、おうそうだな。それより、野暮用ってなんだったんだ? お前がイベントの監視を中断するほどの野暮用なんて思い浮かばないのだから」


「ん、先輩、レディが野暮用っていう時は言いたく無いからそう言ってるんですよ? それを掘り返すってもしかしてデリカシー無し男ですか?」


「うっ……」


「まあ良いですよ。今回は別に知られたく無いことでも無いですからね。ただ、もちろんスイーツは奢ってもらいますが」


 もちろん、なのか。ま、まあ良いだろう。それで分かるのならばお釣りが来るはずだ。多分。


「彼にこのイベントの真相を伝えたんですよ。彼にはまだ第三勢力として戦ってもらうとしか言ってないですからね。最後の試合で彼に華々しくデビューしてほしい、その旨を伝えて来たのです」


 おいおい、随分と穏やかじゃない話だな、それは。


 ってか、そういうのはもうちょっとこちら側である運営が導線なりなんなりを引いてあげるべきじゃ無いのか? そんな任せて大丈夫なのだろうか?


「はい、じゃあというわけでスイーツ買いに行きますよー。今はあまり時間がないですし、お持ち帰りにしましょう!」


 あ、イベント監視を中断する大きな理由を忘れていたようだ。彼女は自分の食欲のためならどんな仕事をも放り出す人間だった。








——————————————————

「ふぅー、間に合ったー」


今回の内容は本編559話の冒頭部分です!


まだ起きて何も食べてない状態なのでようやく胃に食べ物を運べるようです。何度運営はもう良いかな、って思ったことか……


どうか皆さん私を褒めてください、よろしくお願いします!

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