第281話 関係性とNPC


 蜘蛛と爆発する粉塵を使うモンスターの戦い。普通に考えれば蜘蛛が負けるというのは至極真っ当な考え方だろう。


 しかし後輩は蜘蛛が勝つという。果たしてどのように? 蜘蛛が勝つビジョンが全く持って想像できないのだが、どうするのだろうか。


 私は降参の意を込めて彼女の方を向くと、後輩は後輩の癖に私にため息を吐きながらこう言った。


「はぁ、全く仕方がないですね、先輩は。もう少し自分で考えればいいものを。まあ、いいですよ私が教えてあげましょう」


「はっ、ありがとうございます!」


「もう、全く。まあいいですよ、まず、クモちゃんは暗殺を試みました。音もせず背後に忍び寄る様はとてもかっこよかったですね。しかし、彼の武器である鎌では敵の防御力は超えられませんでした。強靭な肉体に阻まれてしまったのです」


 何、爆発性粉塵とかいう結構強力、いやチート級の技を持っているのにそれの加えて高い防御力も兼ね備えているというのか?


 その粉塵のせいで近づけず、近づいたところで防御する。結構完成していないか此奴。


「その後も何度も何度も敵にダメージを与えられないか挑戦していましたが、結局クモちゃんの刃は通らず、挙句に反撃までされてしまいました。しかし、それでもクモちゃんは諦めませんでした」


 ふむ、そこまでされて諦めない精神があるとは……彼の元で働けば強靭なメンタルが宿るというのか? 一応、モンスターではあるものの、その従魔の蜘蛛はNPCだ。


 元々そんな精神を持っている可能性もあるが、そんなNPCはかなり稀だ。となると、彼がNPCに精神的影響を与えたということになる。最初にプログラムする段階でその方向性を決定づけるのならばともかく、もうすでに形成されている自我に影響を与えるなんてどんな手法を使ったんだ?


 何もせずに、これだけの、自殺としか思えないことを自ら進んでさせる、とは考えられない。


「その後もめげずに何度も何度も攻撃を試みました。しかし、それらは全て弾かれる結果に終わりました。万事休すかと思えたその時、相手モンスターに異変が起きたのです」


「異変……?」


「はい、突如胸を抑え、もがき苦しみ始めたのです。そして、その状態の敵にクモちゃんは攻撃を仕掛けました。その攻撃はようやくダメージになり、そのままダメージを継続して与え続けました」


「ん、ちょっと待ってくれ。その蜘蛛は粉塵のダメージは食うんじゃないのか?」


「はい、食いますよ。というかダメージを受け続けながらも攻撃したんですよ? そして遂に敵モンスターがやられた時、自らも地面に伏してしまったのです」


 なるほどな、相当無理をしながら戦っていたということか。そんなことをさせてしまった彼は何を思うのだろうか。NPCだからどうでもいい、とそう思うのだろうか。


「彼は急いで駆け寄り、回復を施しました。この瞬間は泣けましたね。頑張って頑張って頑張り抜いて戦った従魔のことを思っている主人、とても良い関係性だと思います!」


「それはそうだが、そういえばなんで敵は途中で苦しみ始めたんだ?」


「ムー、そんな軽く流していいものじゃありませんよ? まあ、いいですがそれはそのクモちゃんが攻撃を防がれている間もずっと毒を流し続けていたんですよ。その甲斐あってようやく毒が回ったのがそのタイミングだった、ということですね」


 なるほど、意味もなくずっと攻撃を繰り返しているだけかと思いきやちゃんと意味のある行動だったのか


 しかし、それにしてもNPCにここまでさせる彼の力が気になってしまったな。








——————————————————

ここまで読んでくださった皆様、どうかお願いです。こちらにも♡を押していただけないでしょうか。


皆様からすれば押しても押さなくても変わらないかもしれませんが、♡を押していただけるだけで全然違うんです、小さな変化が大きな変化につながります、どうか皆様の力をお貸しください!


どうか、よろしくお願いします!!


目標♡数:50

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る