第279話 幻覚と幻影


「あれ、それでどこまで話しましたっけ? 爆音無効を彼が獲得したところまでは聞きましたか?」


「あ、あぁ」


 そこで聞き間違えて、私が聞き間違えをなんの考えもなしに発言してしまったがためにあの惨劇が生まれてしまったのか……


「では、その続きからですね。そこからはカメちゃんを引っ込めてマグマさんを召喚して攻略を続けていきました。そして、その二人の前に現れた敵はなんと、幻影を使う敵だったのです!」


 幻影? というかその前のマグマさんが気になって仕方がないのだが。確かラヴァマンだったはずだろう? 確かにマグマさんかもしれないが、その呼び方だと少し印象が変わってしまうな。


「彼は、幻影無効ではなかったか?」


「いえ、彼は幻影無効は持っていませんね。恐らく先輩が勘違いしているのは幻覚無効、ではないですか? 後者の方は帰らずの塔で薬物を摂取したことによって獲得しましたが、幻影はそれとはまた別種のものになりますね」


 なるほど、幻影と幻覚は同じ幻にしても、幻影の方は幻の影、つまりは存在するはずのない何かが見えたり、見えなかったりするのだろう。逆に幻覚は、幻の感覚、つまりは現実に作用するものではなく認識、感覚に作用しているのだろう。


 微妙な違いではあるものの、その違いが似たような別のスキルを生み出しているということなのだろうな。非常に面白い。


「ん、だが無効化スキルを持っていないならどうやって幻影に対処するんだ? パッとは思い浮かばないのだが……」


「それはですね、とてもシンプルで単純明快でしたよ? 彼の従魔、マグマさんが森全体を一気に焦土へと変えてしまったのです。彼らは森の中をぐるぐるとさせられていたので、これで一気に解決、ということです!」


 お、おう。なかなかに力技だな。やはり従魔は主人に似るというのは本当の様だったな。だが、それはそれで彼みたいな強いモンスターがわんさか現れてしまうのもどうなんだろうか。


 人間じゃないだけより凶悪さを増している様にも思うのだが……


 私は、彼女が記録していた映像の中で、が捥がれた腕をニュルっと再生しているところを見ながらそういった。


 人間である、ということは制約がある、ということでもある。それらがモンスターたちにはないのだ。そして一切の制約がない状態で彼の様な暴力的に自由な強化、進化が行われて仕舞えば自ずと結果は見えてくるだろう。


 というか、現にこうしてもう既にその片鱗をのぞかせてしまっている。


「先輩、まーた考え事ですか? 人が話してるってのに、もう説明しませんよー?」


「わ、悪かった。続けてくれ」


「はーい。で、その後に敵を捕捉するんですよね。二キロくらい離れていたんですが、そこまではまあ、彼のスキルを持ってすればなんとかなる、っていうのはわかるんですよ。しかし、その後が問題なんです」


 ほ、ほう? 


「彼がマグマさんにその座標を伝えると、マグマさんがなんと超遠距離攻撃をしてしまったのです! しかも、視認どころか本人は感知していない敵を、ですよ!? そりゃ広範囲攻撃ではありましたけど、それでもちょっと強すぎませんか?」


 なっ、そ、そんなことが可能なのか?


 だが、その瞬間、私に悪魔的な閃きが襲いかかってきた。それは、マグマさんが、マグマさんである、ということだ。


「これは推測の域を出るものでは全くないが、マグマさんはマグマさんなのだろう? つまり、マグマっていうことだ。そして、マグマは世界中どこにでもある。いや、正確にはどの場所にも存在する、っていった方が正確か」


「な、もしかしてその地中のマグマと同化して情報を得ていた、とでもいうのですか!?」


「だ、だからあくまで推測、いや妄想の範疇を出ないがな」


 あり得たら、怖い。そういう類のものだ。






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旅団ってもう名前からかっこいいですよね。

はぁー、私にもそんな素晴らしいネーミングセンスがあればなぁー笑


これの素晴らしいところは別にさして難しい言葉を使っている訳でもなしにかっこいいところですよね。


ま、所属している彼らが無茶苦茶かっこいい、というのも影響しているかもしれませんが笑


♡の方、よろしくお願いします!!!!

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