第277話 邪の力


「あ、先輩。先輩が寝てる間に彼が邪の祠に到着してなんやかんやあったんですが、その話聞きますか?」


 も、もうなんやかんやあった後なのか。そりゃ十時間以上も時間があったらなんでもできるもんな。でも、私には聞かないという選択肢がない。


「頼む、聞かせてくれ」


「わっかりましたー! まず、その祠に着いた時のことです。彼が一番乗りでしたので当然のごとく称号をもらいました。その名も辿着者、と言うものですね! 効果はシンプルで影響されづらくなる、とだけ表記されています!」


「影響されづらくなる? ……何に?」


「そう思うのは当然でしょう。恐らく彼も同じように疑問に思ったことでしょう。邪の祠というのはその名の通り、邪の空気が流れていますから長時間滞在することで精神的な悪影響があるんです! ……というあくまで設定ですよ?」


「大丈夫だ、もちろん分かっている」


「その効果が和らぐってことは探索がより快適に進む、ということですから、彼はすぐにでも攻略しちゃうのかな、とも思いましたが流石に彼でもこの祠の攻略には時間がかかっているみたいです。なんせ、二段構造のダンジョンになっていますからね」


「二段構造?」


「はい、まずは彼が辿り着いた先である島の上での戦い、そして島の中央まで行くと本当にそこに祠が存在し、その祠の下には更なるダンジョンが続いているのです。彼は今ちょうど祠付近に到着したところですね」


 これだけの時間があってやっと祠の近くに到達できた、しかも彼が。ということを考えるとこのダンジョンの難しさが窺えるな。


「では、彼が島に到着してから祠に着くまでの道のりを説明しますね。まず最初に出会った敵は一つ目のオーガサイクロプスでした」


「オーガサイクロプス!?」


 普通はサイクロプスだけだと思うのだが、そこにオーガの力が入ることによってより凶悪に凶暴になっているのか。確かにこれは難易度も高いし、邪の要素も感じられる。


「このモンスターは印象の通りとても強くて彼も最初は苦戦していたのですが、従魔のカメちゃんと力を合わせて、目眩しとして毒ガスを使い、攻撃が通りにくい皮膚に対して、吸血で攻める、という選択を通して大ダメージを与えました!」


 なるほど、確かにオーガのサイクロプスなのだから皮膚も硬く、物理攻撃は効きにくかったのだろうな。そこで吸血を選択するのかー。死角がないな。


「しかしこれだけでは倒れないのが邪の祠、そこから彼はタフなサイクロプスに苦戦することとなりますが、何かが吹っ切れたのでしょうか? 突如、彼が持ちうる全てのスキルを使うみたいに幾つものバフを展開して攻撃しました。いくらタフといえど流石にこれは厳しかったようで、ようやくオーガサイクロプスは地に伏すこととなりました!」


 こ、このボリュームでまだ一戦目なのか。恐るべし邪の祠、だな。


 今まで彼が苦戦している姿というのをそもそもそれほど見ていないから、それだけでも珍しいというのに、全力になった彼、というのは一体どのようなものだったのだろうな。


 気になるような、怖いような、だな。


 はぁ、しかしこのボリューム感が祠に着くまで、いや祠についてからも続くと考えると少し滅入ってしまうな。何事もなければ良いのだが。






——————————————————

♡をわ、私に……バタ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る