第274話 ジャンキーで庶民的
「では、最後は彼の筆頭従魔とも言える鳥型の従魔ですね。でも何故かこの従魔の個体名はハーゲンというんですよね。もっとカッコいい名前にしてあげれば良かったのに、なんででしょうね?」
ふむ、確かにお世辞とも格好の良い名前ではないな。確かに何故この名前にしたのだろうか?
もしや、従魔にした時にハゲタカであったから、ハーゲンにしたのか? ……まさかな。
「このハーゲンくんの装備はかっこいいですよ? 凰族の威光、という装備で効果はとてもシンプルに翼が強化される、というものですね。翼とは鳥にとっては命の次に大事みたいなものですからね。飛行力、翼での攻撃などあらゆる事が強化されちゃいますよ。いよいよ、空を取りに来た、って感じですかね。鳥だけに」
「……」
鳳凰の凰を使っての王族、と表記しているところがまた洒落ているな。鳥の中の頂点を表しているとても素晴らしい作品だ。また、効果も限定的でないからこそ色んなことに応用ができそうな素晴らしいもので、とても良い。
正に、空を取りにきた。という彼女の発言にも頷けるな。
「どうした、珍しいな。疲れているのか? 何か美味しいものでも食べにいくか?」
あ、しまった。つい、口が滑ってしまった。
「え!? いいんですか? やったー! え、何にしようかなー。お寿司ー、焼肉ー、鰻もいいですねー。というか、珍しいってどういうことです??」
ん、どうしよ。これは本格的にやってしまったぞ。今の一手で彼女に飯を奢らなくなってしまったのは確定だし、ここの返答次第では彼女にいくら持っていかれるかが決まる。
単なる慰めというか、煽りというか……私の軽率な発言が身を滅ぼすことになってしまったな。口は災いの元、ってまさにこの事だな。あー、なんと答えるべきだろうか。
「いや、なんというか、言葉の使い回しというか雰囲気かな? んー、上手く言語化できないが、なんとなく違うと思ってしまったのだよ、だから気にするな」
これで、どうだ? いけたか? 私はシュミレーションゲームは苦手なんだよな。小さい頃から何度かやっとこはあるが、いつもバッドエンドを迎えていた。だから、自信はない。
「そ、そうですか。というか先輩は何か食べたいものないんですか??」
お、私のターンが回ってきた? これはもしかして行けたということか? となればここで比較的安価な食べ物を選択することによって間接的にも財布のダメージを和らげることが可能になる、はず!
「ら、ラーメンとかどうだろうか?」
「ら、ラーメン……!?」
こ、これは、ダメか? 頼む、どうかどうかラーメンで手を打ってくれ!
「いいですね! ラーメン! 偶にはそういう庶民的でジャンキーな食べ物も悪くはないですね! あ、そういうえば私の友達が美味しいラーメン屋さんがあるっていってたんですよ! 煮干しの美味しい出汁が効いたものすっごい美味しいラーメンがあるって!」
ん? これって……
「ちょっと遠いんですけど、まあ大丈夫ですよね! ささ、早く行きましょう! えーっと場所は……長野県です!!」
はい?? 長野県!? このオフィスってどこにあるって知ってますか??
「あーずっと行きたいと思ってた場所に遂に行けるんですね! あー先輩がラーメンって言ってくれてよかった〜!」
その後私たちはタクシーで四時間くらいかけて長野の山の方へ行き、そこで絶品ラーメンを食べた。その金額については誰も触れないでほしい。
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