第266話 高速にズレるビート

 

「け、獣の修練場って何を強化するん場所なんだ?」


 地下帝国では称号を強化していたからな。恐らくは……


「はい、もちろんスキルを強化する場所ですよ!」


 やはりかー。だが、こればかりは少し不味い展開だな。なんせ、スキルというのは称号よりもさらに直接的な強さに影響するのだからな。


 前回の、称号を強化する際には、彼が強い称号を強化してくれなかったおかけで、なんとかことなきをえたのだが、流石に今回は無理だろう。


 どんなスキルでも強くなれば明らかな差が生まれるわけだし、差が生まれるってことは確実に使われる、ということだ。称号のように地味にステータスアップをする、みたいに目に見えないものではなく、事象として生み出されてしまうのだ。


 はぁ、これでまた彼の強さに磨きがかかってしまうのだなlぁ。


「それで彼は何のスキルを選択したんだ?」


「え、えーっとですね……高速、ですね」


「高速?」


 そんなスキルあったか? 確か最初に獲得した移動速度上昇系のスキルは俊足、だったよな? そしてその進化先は神速、だったはずだ。神速もさらに進化して韋駄天走になったはずだから、高速、というスキルは持っていないと思うのだが……


「そんなスキルいつ獲得したんだ?」


「んー、いつでしたっけー? 確か、どこかのアジトに潜入した時に獲得したんじゃなかったでしたっけ? 結構前なので私も忘れちゃいましたよー」


 アジトに潜入、だと? 確かに彼がそんなことをしていたような気もするが、その時に高速なんてスキルゲットしていたか? 確か、アジトの構成員を片っ端から捕まえて衛兵に突き出していたような気がするが。


 というか、そもそも高速とはどんなスキルなんだ? 本当に移動速度が上昇するスキルなのか?


「あ、そうだそうだ。確か、構成員を捕まえまくった時に、効率化、というスキルと一緒にゲットしたんですよ! いやーだいぶ前の話ですからねー、少し懐かしさすら覚えますよ!」


 ん!? 効率化と一緒に獲得した、だって? それに構成員を捕まえまくった時にどうやって移動速度が上昇するスキルを手に入れられるんだ? そんなに忙しなくアジトの中を駆け巡ったのか?


 ん、捕まえる? もしかして……


「こうそく、って拘束、っていうことか?」


 私はお縄に捕まるジェスチャーをして彼女にそう尋ねた。すると、


「ぷぷっ、何ですかそのポーズは! 絶妙にみっともないですね! それに、拘束と言ったらそれしかないでしょう? もしかして速い方の高速を思い浮かべていましたか? もしそうなら、どんなポーズするつもりだったんですか?」


 むっ、なんだ絶妙にみっともないって。絶妙にムカつくな。それに、こちらは彼女の音声だけでしか判断できないんだからそりゃより馴染み深い方の意味に辿り着くのは仕方ないだろう。


 高速の時のポーズかー。ただ、高速といえば高速道路のイメージもあるし、走るだけだと高速にはならないから、なんだかんだ難しいお題だな。


「って、彼は拘束を選んだのか!?」


 






——————————————————

ズレるビートというのはある曲から拝借、サンプリングしたワードですね。咄嗟に思いついたので使っちゃいましたw


分かった方がおられましたらお知らせください。

ただ、少しマイナーかもしれません、いや、メジャーではあると思うのですが……

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