第257話 前言撤回の鑑


「せ、先輩! 彼、どうやら茸師匠というスキルを強化するようです! このスキルは確かキノコを食べた時にその効果が上がる、みたいなものだったとおもんですが、なんでこれを強化しようと思ったんですかね? これからはキノコで戦っていくつもりなんですか?」


 茸師匠!? そんな称号なんて持っていたか? ってそれよりもなんでそんな地味な、というかよく分からない、使い所のなさそうな称号にしたんだ? 絶対他に何かあっただろう。


「称号を強化するには何が必要なんだ?」


「えーっとですね、このマシンで称号を選択すると、条件がいくつか提示されます。それをクリアするだけで、その称号の上位互換の称号がもらえるというシステムのようです」


 結構、お手軽なんだな。もっと難しいものだと思っていたのだが、ここに到達できるかどうかでフィルターをかけて、ここに到達できた者には恩恵を与えるという構造にしているのか?


「因みに、今回の彼の場合はどんな条件なんだ?」


「えーっとはいそうですね。条件は全部で四つです。一つ目は合計千個の茸を食べる。二つ目は百種類の茸を食べる。三つ目は五十種類の茸料理を食べる。四つ目は茸による食中毒を三十回起こす。これらを全て二十四時間以内に行わなければなりません」


 おっと、これは前言撤回だな。あまりにも条件が厳しすぎる。


 え? これって人間にできるものなのか? どれもちゃんと難しそうだ。一つ目は単純に体力と根気の戦い、二つ目も同様、三つ目に関しては最近料理人になった彼なら簡単かもしれないが、知識と技術が問われる。そして四つ目は……まあ、その内なるか。


 ということは、難しいのは一つ目と二つ目だな。そもそも千個集めるだけでも一日以上時間がかかりそうだが大丈夫なのか? しかも百種類以上だろ? 千個もあれば百種類くらいいきそうなものだが、逆に後一種類足りない、みたいなことになるとキツそうだな。


「あっ! 彼、従魔を全員呼び出して、そして各方々に解き放ちましたよ! もしかして茸を取って来させるつもりですかね!?」


 はっ、そうだ。彼にはその手段があったか。先のイベントでもその手を使っていたじゃないか。何故、それを失念していたのだろうか。


 だが、これで彼が条件をクリアする可能性がグッと上がったな。あとは彼が料理できるか、食中毒になれるかどうかの勝負となりそうだ。


「しかも、彼自身も街へ出て市場から茸を買い占めているようです! どうやら両方から攻めるつもりのようですね!」


 それだけ千の壁というものを考慮しているのだろう。それに市場では現物が目の前にあるから効率的な仕入が可能になる。従魔に任せるのは効率はいいが、全ての心配がないかと言われればそれはまた別の話だからな。


 そして、そして数時間後、あらゆる場所から茸が消えた。


 彼は、ひたすら自分の口に、胃に、キノコを運んでいた。食べながら料理を作り、料理を作りながら食べる。彼の変温無効のスキルがまさかこんな所にまで役立つとは思ってもいなかったが。


「あっ、クモちゃんは配下を使って大量に集めてますよ!? そしてもう条件の半分以上をクリアしちゃってます!」


 ふむ、これはまたもや前言撤回をしなければならないな。彼の前にはどんな難しい条件もさして意味がない、と。


「あ、でも茸を持って帰れなかった従魔もいるようです! これはもしかしたら達成できない可能性もあるかもですよ?」


 うん、これに関しては大丈夫だ。おそらく彼女が建設したフラグだろうから、そのうち大量の茸が……ほら、運ばれてきた。そして、


「あー! っと、ここで達成しましたー! かなり時間を残してクリアしましたね! ですが、いかに彼といえども何時間もかかるとは、この条件がどれだけ厳しいことがわかりますね」


 そういうことだな。だが、予想通り彼はクリアしてしまったな。さて、茸師匠の進化先は一体どんなものになるのだろうか?


「あ、あれ? カメちゃんが今更キノコをたくさん持ってきましたよ? もうクリアしたのに残念ですね」


 しかし、彼はその茸を全て口に運んだ。もう、茸なんて当分見たくもなければ食べたくもないだろうに、素晴らしいな。上司としての鑑だ。私は絶対にそこまでできない。そして、しっかりと感謝の辞も述べている。


 彼が全ての茸を食べ終わる頃には日が沈んでいた。






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ここでも何か称号を配布したいなー。

ということで、全ての話に♡を押してくれた方には、《真諦者》を配布したいと思います!


また、♡をくださるととても嬉しいです!

どうか、どうかよろしくお願いいたします!!


目標♡数:50


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