第255話 従魔の所業


「はっ!? え、ど、ど、ど、ドユコト?」


 彼女が完全に壊れてしまった。


 それは我々が出勤して少ししてからだった。彼はどうせイベントに参加しないのだからと、たかを括っていた私たちは通常業務を終え、ランチの後にゲームのモニターを開始した。


 すると、そこには傍若無人なモンスターたちがいた。プレイヤーがいるのにも関わらず、ただ只管に金の卵を追いかけ回していたのだ。


 プレイヤーたちは開いた口が塞がらず、中には運営にも問い合わせてきた人たちもいた。そんな人達に言いたい。私たちも何が起こっているのか知りたい、と。


 もちろん他のスタッフが対応してくれていたようだが、それでもどうすることもできなかったようだ。そりゃそうだ。だって何も知らされていないのだし、何も意図していないのだから。


 私たちが発見したのは正午頃だったが、それは午前中からもうすでに始まっていたらしい。


「昨日は全く興味がないふりして、ぐっすり休んで、次の日に午前中からログインして暴虐の限りを尽くす予定でしたか……これは一本取られましたね」


 後輩が何か言ってる。彼は別に我々と戦っているわけではないだろう。しかし、してやられた、という気持ちも分からなくはない。なんせ、昨日の彼の行動で完全に虚をつかれたのだからな。


 油断していた我々が悪いと言えばそれまでなのだが……


「ちょ、ちょっと待ってください!? 彼の従魔の一体が、金の卵の巣を発見しちゃいましたよ!?」


「な、何っ!」


 金の卵の巣、それは文字通り金の卵が敷き詰められた巣のことである。そしてこれはただ一度に多くの金の卵を発見できることが最も大きな利点ではない。これを見つけることのボーナスは、卵が逃げないという点にある。


 金の卵を平均的なプレイヤーが倒そうとするとかなり骨が折れる。逃げ足がすばしっこく、捕まえられそうになったら更にギアを上げられるからだ。


 しかしその苦労を味わうことなく、しかも大量に卵を獲得できるボーナスとして巣を設置していたのだが……


「まさか、上空から探索されるとは思ってもみませんでしたよ……」


 全くその通り、だな。彼の従魔は空中で圧倒的なスピードが出せるし、更にモンスターの特権なのか索敵能力が非常に高い。単純な視力や、こんなところにありそうと当たりをつける能力も優れているのだろうな。まさに野生の勘と言ったところだろうか。


 そんな卵を探すのに最も適しているモンスターが空中でビュンビュン移動しながらバコバコ見つけられたらそりゃもう勝ち目はない。


 プレイヤーがどう考えても辿り着かないであろう場所にだって直線距離で行けてしまうのだからな。国別対抗戦といえども彼の独壇場であったか。なんか、不思議な気持ちだな。嬉しいような悲しいような。


 そして、彼の御一行による金の卵狩りは夜遅くまで続いた。


「先輩、彼の従魔の中で、トリちゃんを除いた従魔の金の卵の討伐数が約七百体くらいなのに、対して、トリちゃんは一人で千体以上倒してるんですけど……」


 それは、日も暮れて、時計もてっぺんをとうの昔に超えた時間帯に、彼女が虚な目をして発した心の叫び声であった。






——————————————————

色んな角度から精神攻撃を受けました……

(訳:色々辛いことがありました。


ですので、皆様の暖かい♡でどうか癒してくださいませ。

お願いします……


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