第253話 必殺仕事人?


「……これってどっからどう見てもキリンですよね? 麒麟じゃないですよね?」


「……」


 彼が討伐に向かった先にいたのは、タダのキリンだった。


「え、絶対そうですよね? こんな首の長い伝説上の獣なんて嫌ですよ?」


「……」


「この場所って、物凄く神聖な雰囲気出てますよね? 緑も深くて碧い日の光も一切入ってこないような、そんな場所ですよ? それなのに、それなのにここにいるのが、麒麟って」


 言えない、言えない。朱雀、白虎、玄武、青龍も出るかもって思ってたなんて言えない。


 こんなに舞台が整ってるのに、まさかただ首の長い青白く発光しているだけのキリンだなんて、誰が想像するするだろうか?


 というか、青白く発光するキリンってなんだ? それはもう麒麟でいいんじゃないか? なぁ、そうだろう?


「先輩、さっきから何虚空に向かってブツブツ言ってるんですか? 怖いですよ? それより、また彼は従魔に戦わせるみたいですよ? もう自分で戦うのは飽きちゃったんですかね?」


 自分で戦うのに飽きた。確かにそれはあるかもしれないな。彼はどんなに敵が強くても危なげなく勝ってしまうからな。


 大富豪が自分で稼ぐことに興味を失い、若者や次の世代に投資するように、彼もまた自分がただ得るだけの勝利ではなくて自分が育てた者の掴み取る勝利が、そしてその喜ぶ姿が、見たいのだろうな。


 私も興味を失ったというわけじゃないが、年齢的にそろそろ次の世代へと引き継いでいくことを考えないといけないのだが……


「あー! 機動力の無いキリンに対してちょこまか動けるスピード重視のクモちゃんを当てましたよ!? この人ただ単に相性考えてるだけなんですかね!?」


 この調子じゃ世代交代にはもう少し時間がかかりそうだな。まあ、最近ではかなり寿命も伸びてきてまだギリギリ私も若い方に数えられるかもしれないがな。


「あっ、倒れた! え……何で?」


 キリンの巨体がドシーンと、倒れてしまった。


「……え?」


 なんかいつの間にか倒れているんだが、どういうことなんだ? 特段彼の従魔が何かしてるようには見えなかったんだが。


「あれ、このクモちゃんもしかして糸の力だけで倒したんですか!? あの巨体を逆に生かして倒すなんて頭いいですね!」


 確かにそれは頭がいいな。彼の従魔とあらば武力だけではなく才力も兼ね備えてしまうのか……恐るべしだな。


 というかこの調子では従魔に勝たせるのもその内飽きてしまうんではないのか? 大丈夫なのか?


「あっ、最後は大胆に行くんですね……」


 彼の従魔がキリンの首を落としたことでこの戦いは呆気なく閉幕した。それにしても首が長いから今持っている生首は生首でいいんだろうか? もはや頭でしかないような……?


「え、キリンってツノが五本もあるんですね! 初めて知りました!!」


 お、おう。それは良かったな、うん。まあ、私も初耳なのだが。





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