第252話 薬と毒と包含性


「あ、何かドロップしてますよ。えーっと、癒しのペンダント? 効果は自身やその周りの者を癒すことができて、装備者が使用する回復技の効果が上昇するですって? 強いのかな? でも周りの者を癒すってなんとも曖昧な表現ですね」


 確かに曖昧だな。だが、こういうのは曖昧である方が強いのだぞ? 例えばそうだな、水、というよりも飲み物という方が包含性が強いし、飲み物よりも液体、という方が多くをカバーできる。


 別に多くをカバーしたいのではない、とそう思うかもしれないが、例えば水操作というものが液体操作になったらどうだろうか? 相手の体内にある血液も動かせるだろうし、道端に落ちている水銀だって動かせる。挙げ句の果てには金をも溶かす王水だって思いのままだ。


 そう、これらのことからより曖昧な方が強いということが伺える。


 単に癒す、と言ってもその方法は多岐にわたる。例えばゲーム内でイメージしやすいのはダメージの回復だろう。特殊な職業に就いている人は解毒も思いつくかもしれない。だが、それだけではない。


 癒しは心にも作用するからだ。病んでいる状態から復帰させたり、逆に何でもない通常状態から平穏をもたらしてくれたりするだろう。そう、曖昧さは時として武器になるのだ。


「ん、先輩何考えてるんですか? お、ペンダントを倒した張本人であるカメちゃんにかけるようですね! でも、カメちゃんは回復魔法を覚えてないですよね? どうするんでしょうか?」


「え……?」


 カメちゃんにつけるのかい? 君じゃなくて? い、癒すというのは毒を使ってもできるのか? 毒は薬にもなるっていうしな。うん。多分そういうことだろう。


「お、出てきましたね。いやーあっという間のダンジョン制覇ですね! ダンジョンってもっとしっかり準備して長い期間をかけて取り組む者だと思ってたんですが、流石は彼、と言ったところでしょうね!」


「あ、あぁそうだな」


 いや、確かに彼はすごいのだが、別にダンジョンの基本は変わらないぞ? 今でもしっかり準備して長い期間かけて取り組むっていうのは変わらないからな??


「あれー? 今度は暗殺ギルドに向かっているようですよ? 彼は休むことを知らないんですかね? こんなに精力的に動いてると疲れませんかね? たまにはといえVRの中でもスイーツで甘味を摂りたくならないんですかね?」


 いや、それは後輩だけだと思うぞ? うん。みんながみんなスイーツ好きってわけじゃないだろうからな。特に、VRでも食べたいって思う人はかなり稀有だと思うぞ?


 まあ、こんなことは死んでも口には出さないがな。口は災いの元、大人になると覚えなくていいことばかり覚えてしまうものだな。


「あ、依頼書を手渡されましたね。えーっと、キリンの討伐ですが。……麒麟の討伐!?」


「麒麟!?」


 それって漢字の方だよな? キリンじゃなくて麒麟だよな? 中国神話に出てくる伝説上の生き物で、獣を生み出したとされる神聖なる生き物。


 しかもその名前の格好良さから多くのアニメ、ゲームで強技、強キャラとして出現してきた。それをもう、もう倒すっていうのか?


 ま、まさか朱雀、白虎、玄武、青龍は出てこないよな? 流石に四対一なら倒せないと信じたいのだが、もし各個撃破とかされて変なスキルとか称号とか手に入れられたらいよいよまずいんじゃないか?


 頼むからせめて麒麟だけにしてくれよ? ……まあそれでも何かしらの称号やスキルは手に入れてしまうか。








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