第248話 研修と解説と暴露


「……なるほど、そういうことでしたか」


 お、彼が研修を何故受けていたのか、それについて彼女がわかったようだ。


「確か彼は冒険者ギルドに入ることなく暗殺ギルドに入っていましたね。ですから、冒険者ギルドカードを持っていないのです。そして今回、ダンジョンの情報を探している時にカードの提示を要求されたところそれに答えられず、、、って感じみたいですね」


 なるほど、まさか冒険者ギルドに入らずに他のギルドに入ることができるなんて誰も思わないからな。我々運営の人でも予想だにしていなかったのに、現地の人がそんな想定できるわけがない。


 それに、仮に他のギルドに入れたとしても基本的に依頼を受けたりできるのは冒険者ギルドだけだ。だから結局は冒険者ギルドに登録する必要がどこかで出てくる。


 しかし、彼の強力な運命力のせいなのか、依頼を独自に受注している暗殺ギルドに入ったことにより、完全に冒険者ギルドに用がなくなってしまったのだ。


 どんな確率だよ、と思わなくもないが、全ての元凶は何故か暗殺ギルドに入れてしまった彼自身だ。そして今回はそれが巡り巡ってきただけだから、うん、誰も悪くはないな。ただ、色々と変なものを見せられた冒険者ギルドの研修を担当していた人は運がなかったと思ってもらいたい。


 彼はもうほとんど災害のようなものだから。


「お、でもこれでようやく本来の目的であるダンジョン探索ができそうですね!」


「ダンジョンについての説明をもらえるか? このゲームにおいてダンジョンとはどのようなものなのだ?」


「え、そんなこと聞きます? まあいいでしょう。改めて確認しますか。ダンジョンとは平たくいうと魔力溜まりみたいなものです。地球上にもダイヤモンドが多く取れたり、金が取れたり、逆にマグマがいっぱいあるところだってあるでしょう? そんな感じです」


 ん、どんな感じだ?


「つまり、魔力が局所的に集中している場所に自然発生するってことでいいいんだな?」


「はいそうです。正確にいうならば、魔力の濃いところは魔物も植物も好みますから、次第にその場所に多くの生物が集まり、形成されていく、と行った感じですね」


「なるほど、じゃあこちら側が意図的に配置したダンジョンというのは存在しないのだな?」


「んー、魔力が溜まる地形は私たちは選べませんから、そうといえばそうなんですが、地形を作ったのも我々ですし、魔力が溜まる条件というのもこちらで弄ろうと思えばできますから、完全な偶然、というわけではないですね。帰らずの塔みたいに完全な人工物もありますし」


 確かに、それもそうだな。


「なるほど、確かにダンジョンはゲーム内でほぼ自然発生的に生まれることは理解した。じゃあ、なんで彼はダンジョンの位置が記載された地図を持っているのに、ダンジョンが存在するはずのない場所に一直線に向かっているんだ?」


「へ?」


 私の言葉には彼女も素っ頓狂な声を出した。


 そう、彼はまるで見えないダンジョンが見えているかのようになんの迷いもなく、一直線に隠しダンジョンへと向かって行っていた。


「え、ちょなんでバレてるんですか? 確かあれは……誰だっけなウチの開発チームの誰かが半分戯れに設置したものですよ? 手がかりなんてどこにもないはずなのに、なんでばれてるの……?」


 だが、彼は一直線にその地点まで到達し、そして隠しダンジョンに侵入した。







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注)彼は勘に頼ってその場所に到着しました。詳しくは420話あたりを参照

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