第246話 触手同時展開本数


 まさかの触手二十本同時展開は流石に……どうなってんだ? 普通に考えて両手の感覚で二つを同時に動かせるのは分かる。と言うかこれがまずは第一段階だろう。


 そこから慣れて三本目に突入する。んーいけないことはない、のか? ピアノみたいに全く別の動きを同時に行う訳ではないからな。実際にやってみないと分からないが、いけなくはなさそうだ。


 そして、そのまま両手両足を同時に動かすイメージで四本まではいけたとしよう。そこがどう考えても限界だろう。私の激甘脳内シュミレーションでも同時展開四本が限界なのに、二十本って一体彼の頭はどうなってるんだ?


 だって、並列思考が得意とかいうレベルじゃないだろう? 人智を超えてしまってる。


「なあ、普通に考えて人間が二十本も同時に触手を扱えるものなのか? 彼が特別なだけだよな?」


「んーその質問に答えるならば、彼は特別です、が答えになるでしょう。しかし、だからといって二十本動かせている訳ではないようです。ちゃんと二十本を同時に動かせる仕組みがありました」


「仕組み?」


「はい。どうやら彼はスキル、分割思考を使用することによってそれを可能にしているようです。彼の中で四つの人格を作るように思考を分割し、それぞれに操作を分けることで二十本同時操作を可能にしているようです。ですので、先輩の質問には特別ではあるものの、先輩が思ってるほど特別ではない、が正確な答えになりますね」


「は、はぁ……」


 並列思考ならぬ、分割思考をちゃんと使ってたってわけね。それでもそれぞれが五本同時に動かしているんだから、どう考えても凄いよな。文字通り頭おかしくなきゃできない芸当だろう。


「先輩もやってみますか? 今なら試操室にいけばできるようにしておきますよ?」


「いや、大丈夫だ。どうせ三本もできないだろう。それより彼は大丈夫なのか? そのスキルを使ってまた新しい悪魔を倒しに行ってないのか?」


「それなんですが、何故か従魔を全員目の前に召喚させて、何か話しているみたいなんですよ。重要な話をしているようにも見えないので、盗み聞きしようという気にすらなりませんし……一体何をしてるんですかね?」


 いや、重要そうなら盗み聞きしてるのか! ま、まあ別に悪いことじゃないから有事の際は仕方ないのだが、職権濫用にならないようにだけ気をつけて欲しいものだな。


「んあ? 終わったみたいですね。これからどこに向かうのでしょうか?」


 今、ものすっごい変な音したが大丈夫か? 女性が出して良い音だったか? 大丈夫か?


「あれ、彼はどうやらギルドに向かっているようですね。もちろん、冒険者じゃなくて彼が所属している暗殺ギルドの方です」


 ふむ、ギルドか。一体何のようだろうか? 先ほどの従魔との会合も何か関係があるのだろうか?


「ん? どうやらダンジョンについて聞いているようですね。ですが、良い情報が入らなかったのかギルドを転々としていますね。あ、今度は冒険者ギルドに向かうようです」


 ん、ダンジョンでそこまでして欲しい情報なんてあるのか? なんか嫌な予感がするのだが……


「ん、え! ちょ、何してるんですか!?」


 彼女がとても驚いた様子でモニターに向かって叫んでいた。


「ん、どうしたんだ?」


「い、いや、彼が、彼が……」


 彼が?


「冒険者ギルドに登録する為に、初心者用の研修を受けようとしているんです!!」


 な、なんだってーー!!??

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