第240話 ユーザーが作ったスキルで遊ぶ運営


「さーて始まりました、指を振る大会! 出場者は二名、さて、栄光は一体誰の手に!?」


 ……なんか変なのが始まってしまった。


 私は指を振るを使ってみたいと言ったら、彼女がノリノリでそれ良いですねと乗ってきてくれたのだ。運営陣だけが使えるコンソールからゲームに入って今は仮想戦闘空間に入っている。


 本来は、スキルの仕様が正常かどうか試す、主にデバッグのための施設なのだが、まさか私が遊びに使うことになるとは夢にも思っていなかった。


「ルールは単純にお互いに指を振るってことでいいですね? それ以外はもちろんなしで、避けるのも当然なしですよ? 先攻か後攻かはコイントスで決めましょう」


「分かった。では、表で頼む」


「え、嫌ですよ。なにさも当然かのように表で頼む、とか言っちゃてるんですか? 私が表に決まってるじゃないですか」


「あ、あぁ。なら裏でいいぞ?」


 こういうのに固執する人っているんだな。全人類共通でどうでもいいことって思ってたから、不快とか以前にびっくりが先行した。


「よし、表なので私が先行ですね! 一発目から決めちゃいますよー! 【指を振る】!」


『指を振る:ファイヤーボールが選択されました』


 ボフッ


「よし! ファイヤーボールはなかなか当たりなんじゃないですか? あ、そういえばHPはお互い同じですよね? なら、この勝負もらいましたね!」


 くそ、良い一撃をもらったようだ。


「だが次は私の番だ、【指を振る】」


『指を振る:ゴブリンダンスが選択されました』


「……」


「ぷぷっ、なんですかその技初めてみましたよ! どんな効果なんですか?」


「どうやらVITが少し下がって、STRが少し上がるというバフ技みたいのようだ」


 くそう、私は小さい頃から運が良いと思える場面に遭遇したことがほとんどないからな。ビンゴ大会、検証、ガラガラ、どれも当たった記憶がまるでない。


「じゃあ、どんどん行きますよー! 【指を振る】!」


『指を振る:紫電一閃が選択されました』


 ジャキンッ


「きたー! ここにきて四字熟語スキル! 先輩も瀕死ですね、これはもう流石に私が頂きましたね! どうせ先輩はまたゴブリンダンスするんでしょう?」


 くっ、いい技をひかれてしまった。だが、まだ負けていない、負けていなければなんとかなる、はずだ。


「【指を振る】」


『指を振る:ゴブリンパンチが選択されました』


 ドス、


「ぷはははは! 先輩どんだけゴブリンに好かれてるんですか! じゃあこれでもう終わりですね! 【指を振る】!」


『指を振る:星の祈りが選択されました』


「チッ、回復ですか。先輩、命拾いしましたね。ですが、次でお終いですからね」


 ふぅ、なんとか生き延びることができたようだ。しかし、彼女のいう通り、次で負けてしまうだろう。ここで決めなければ……


「【指を振る】」


『指を振る:厭離穢土が選択されました』


「「え?」」


 そこに彼女の姿はなかった。だが、それと同時に私はあることに気づいてしまった。そう、これ、彼女が勝つまで終わらないやつだ、と。


 そしてそこから、私は五連勝した後にやっと指を振る大会を閉幕できたのであった。






——————————————————

注)彼女は戦になると人格が変わっちゃうタイプです


時間がなかったので、ちょっとふざけましたw

お許しください笑

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