第239話 問題のあるスキル


「あ、彼、これはやっちゃってますねー」


「ん? どうしたんだ?」


 彼女のこの反応は少し珍しい気がするんだが何かあったのだろうか?


「いや、今ちょっと別件の仕事をしていたんですけど、少し目を話した隙に彼が仙術を使って無茶苦茶新スキルを生み出していたんですよ!」


 あ、なるほど。確かにそれは精神的ダメージというか、やられた感が強いだろうな。


「ち、因みにどれくらいの量を作ったんだ?」


「はい、えーっと、いち、にー、、、六個ですね!」


「六個!?」


 そんな短時間でスキルを作れるもんなのか? 彼の師匠の仙人でさえかなりの時間をかけて地道に編み出していく、みたいなこと言ってよな?


 それは彼はこの短時間で六つも作ったとなると、もうゲームバランスどころの話じゃなくなるんじゃないか?


「スキルの効果を教えてくれないか、六つも作られたとなると相当不味い気がするんだが」


「そうなんですが、そのスキルもまた問題児でして……」


「問題児!?」


 それほどまでに強力なスキルを六つ作ったということか? 短時間に大量生産したということから、スキルの質はそれほど高くはないと踏んでいたんだが、流石にそれは甘かったか。


 彼は本当に隙がないな。このゲームに愛されているというか、愛して止まないというべきか……


「はい、問題児というのも色々な問題がありまして。一つは強さの観点でしょうがそれに関してはそこまで強くはない、と思います。少なくとも彼が既に持っているスキルととって変わるようなスキルではないのは確かです」


 む、そうなのか? なのになんで問題児なんだ?


「それで、問題というのが……スキルを説明した方が早そうですね。まず一つ目が指を振る、というものですね」


 ん、もしや。


「はい、先輩が思っている通りですね。効果もスキルを使用すると全てのスキルの中からランダムで一つ発動できるという技になります。一応制約としてパッシブスキルは五分間のみ、という物があるそうです」


 そ、そういうことか。なるほど、これで彼が短期間でスキルを量産できた訳がわかったかもしれない。


「彼は、既にあるイメージを元にしてスキルを作った、というわけか?」


「はい、そのようです。今の指を振るもそうですし、他にはまもる、ぶんしんのじゅつ、猫騙し、ぐんぐにる、皇帝ペンギンですね。彼の憎いところは実現可能なちょうどギリギリのラインを見極めているところですね。ぶんしんのじゅつやぐんぐにるなんかは、多分元ネタ通りにしたら再現が厳しそうだなと思って少しアレンジしているんですよ」


 なるほどー、これが彼女が問題児といった理由かー。確かに問題だな。でもまあ、別に悪いことではないから良いんだろうけどな。


 でも、彼が使うと何故か化けそうで怖い。特に指を振ってほしくはないな。


「まあ、これらは全部私たちから見ての問題ですので、彼からすれば特になんの問題もありませんし、彼も新たに身につけたスキルを使ってみたかった、という側面が大きいような気がします。ですので、そこまで心配する必要はないのかな、と思いますよ」


 そうだと良いんだがなー。






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圧倒的ロマン砲、『指を振る』

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