第237話 後輩の変化


「どうやら彼は己没同化で大量の情報を一度に取得することで、体がその情報量に耐えられなくなって死んでいるようです」


 ふむ、情報過多という訳か。あまりにも多すぎる情報の本流にその命の燈を消されているのだな。


 だがしかし、なぜそのようなことを? ただ死亡数を稼いでいるだけなのか……?


「それにしてもずーっと死に続けていますよ? そして彼は全然納得していない様子。死ぬことによって何か得られるのでしょうか? それとも、己没同化によって情報を得ることの方が重要なのでしょうか?」


 なるほど、死んでいるのはあくまで副産物という考えか。確かにそう捉えられなくもないか。ただ、彼は情報を得ているだけだぞ?


 もしかして私たちの考えすぎて、本当はただの死亡数稼ぎで、無効化スキルが獲得できないからイラついているだけなんじゃないのか?


「あっ……! 彼が!」


「ん、どうしたんだい? 無効スキルでも手に入れたのか?」


 彼女のその顔は心底驚いているような顔だった。それでいてどこか嬉しそうな顔でもあった。


「遂に、遂に、彼が仙人へと至りました!! 彼が死に続けていたのもずっと修行の一環だったんですね! 仙人に度々会っていたのもコツを教えてもらっていたのでしょうね!」


 なるほど、仙人か……って、仙人!?


「彼が、修行僧ではなく仙人になった、ということだよな?」


「えぇ、そうですよ? やっと修行の成果が実ったようですね!」


「あ、あぁそうだな」


 どうやら彼女はずっと彼を見守っていたせいかかなり思い入れが強くなってしまっているようだ。別にそれが悪いことではないのだが……


「彼が仙人になったということは少し、いやかなり強くなるということではないのか?」


「えぇ、それはそうでしょう。仙人になると、仙術が使えるようになり、先人達から技を受け継いだり、自ら編み出したりすることで戦闘の幅がグッと広がることになりますよ」


 そんなことをとても笑顔でいう後輩。彼女もだいぶ変わってしまったようだな。前までは彼が一つ無効化スキルを手に入れるだけでもワチャワチャしてたというのに……


 まあ、そうだよな、彼が強くなるということは止められないことであるから、それに一喜一憂していてもしょうがないからな。


 それよりかは自分が育成ゲームでもしている気分になって彼の成長を楽しむ方が健やかというものか。


「あ、あれ? 彼がもう仙術で一つの技を生み出しちゃいましたよ? え? 新たな技を作るって結構難しいというか、作り方を師匠に教えてもらわないとほとんど不可能なんですけど……はい? これどうなってるんですか?」


 ん、どうしたんだ?


「って、なんですかこれ! 纏衣無縫って普通に隠遁の上位互換じゃないですか! しかも、同時発動できるって、はい!? もう、おかしすぎますよー!」


 うん、やはり後輩はこうあるべきだよな。

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