第236話 穿った彼女


「彼のお師匠さん、本当に良く食べますね。状態異常無効の凄さをまさか豚骨ラーメンで知ることになるとは思いもしませんでしたよ」


 確かにそうだな。色々と予想がが重なりすぎているからな。そもそも、彼が毒入りのラーメンをなぜ師匠に食べさせたのか、ということから疑問に満ち溢れているし、その毒攻撃を一切もろともしない師匠さんも面白すぎる。


「あれ、何か会話をしていますね。毒を入れられたことに怒っているのでしょうか? 効かなかったからいいだろと言いたいところですが、殺そうとしたのは事実ですからねー」


 まあ、確かに師匠さんからしたら殺されようとした、ってことになるのか。その割には体がピンピンすぎるがな。


「あれ、急に二人が別々になりましたね。もう師弟関係が終了したのでしょうか? でも、彼は彼で色々修行っぽいことを行ってますよ。穴に潜ったり、雪山の頂上で寝転んだりと、一体何をやってるのでしょうか?」


 ん、ん? ちょっと待った。今のどこが修行っぽいこと、なんだ? 穴掘って横になっただけだろ? 全然、修行してないだろ。修行ってほら、滝行とかみたいなしんどいことじゃないのか?


「あ、もうスキルゲットしちゃいましたよ? えーっと名前は己没同化、読み方はきぼつどうか、みたいですね。自分を消して周囲と同化し、感覚可能範囲を広げるというスキルのようです。感知、探知スキルの最上位互換のような風格ですね」


 確かにそうだな。何か対象が存在してそれを感知する、探知する、のではなくて、ただ単に感覚そのものを広げてしまうというなんとも規格外にして恐ろしいスキルだ。


 使い方を工夫したらすごく化けそうなスキルでもある。


「あれ、また師匠の元に帰ってきましたね。ってことは流石にまだ師弟関係は続いているみたいですね。あ、ってか今のスキルを獲得するよう師匠に言われたんですかね? 獲得するまでは儂とは会ってはならん、みたいな? でも、彼が速攻で取得しちゃったから少し焦ってるのでしょうか?」


 焦ってはいないと思うが、少し驚いてはいるのではなかろうか? 自分の教え子がものすごいスピードで成長するのは嬉しいことだろうしな。私も少し似たような経験があるしな。


「あれぇ? また二人は解散しましたよ? ってことは、また課題を出したんですかね? なんかここまでくると師匠が彼を近づけたくないから、無理難題を押し付けているようにも見えてきました。でも、それを彼の異常な何かでクリアしてしまってるから焦ってるんじゃないですかね?」


 ま、まあ、そうだな。彼女の思考回路はいけなくもないが、少しだけ無理がある、そんな考察が多いな。別にただ単に師匠が課題を出してそれを彼がクリアしているってだけでいいんじゃないか?


 まあ、彼女が穿っているのか、私が馬鹿正直に受け取りすぎなのかは定かではないが。


「あ、彼、死んじゃいましたよ?」


「え?」


「というか、今もなお死に続けてますよ?」


「え!?」


「もう五十回くらい」


「えぇ!!??」


 一体、どうやって??





——————————————————

穿っている、というのは穿った見方をしているという意味で使っております。


今回の話はかなり後輩が穿っておりますので全然正解しておりません、彼のその時の気持ちが知りたい方は370話付近から読んでみれば分かるかと思います!!

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