第232話 蜷局と寿命


「あ、彼が巨大な蛇を見つけましたね」


「巨大な蛇だって?」


「えぇ。彼が洞窟内で抗魔燈をつけているせいで、ほとんどの敵が逃げていきますから、この蛇さんくらいですね、あの燈が気にならないのは。本来はプレイヤーを騙すためのミミックなんかも自分から逃げちゃってましたよ?」


 えぇ? それはどうなんだ? 別に擬態している間は逃げなくてもいいと思うのだが……抗魔燈の威力がそれほど強いということだろうか?


「あれ、抗魔燈から逃げないほど強い、って思ってましたがこれもしかしたら寝てて気づいてないだけかもしれませんよ? この蛇、蜷局を巻いて気持ちよさそうに寝ていますよ」


 蜷局を巻いて寝るってどのような感触なのだろうか。人間である私たちも自分の体の一部を枕がわりに使って寝ることはある。しかしそうすると、寝起きは確実に血が回らなかったことで痺れてしまう。


 だが蛇の場合は、蜷局を巻いているためある一点の血が止まるということはないだろうし、体重のかかり方も全身に均一にかかっているはずだ。つまり地面と接している部分がありながらも、頭付近は完全に自分というベッドの上になることができる。……快適なのだろうか?


 なぜ私がこれほどまでに気になっているかというと、人間がベッド以外で寝る時の姿勢が難しいと思っているからだ。私は会社に泊まることがよくあるのだが、その時仮眠する際の椅子への座り方を迷ってしまうのだ。


 これは私だけの悩みではないはずだ。多くの学生も授業中に寝るときの姿勢をより良いものにしたいと思ったことがあるはずだ。


 そこ問題の答え、手掛かりになりそうなのがこの蜷局を巻いた蛇なのだ。だが、


「あ、蛇起きましたね。この蛇はここのボスだからプレイヤーが一定以上近づかない限り起きないように設定されていたようです」


 え、なにそれ羨ましい。ずっと寝ていられるじゃないか。しかも、寝ることすら暇になってもプレイヤーの相手という楽しそうな仕事が待っている。この蛇はどう思っているのかは知らないが、最高じゃないか。代わって欲しいくらいだ。


「え、この蛇もカメちゃんだけに相手をさせるんですか!? それはちょっと荷が重すぎません? 大丈夫ですかね? あぁっ! っと、噛みつきも咄嗟に甲羅に籠ることで難なきを得ましたね。意外といけちゃったりするんでしょうか?」


 ヘビとカメは両方とも爬虫類という共通点があるが、蛇はどうしても捕食者のイメージが、亀はその見慣れなさも相まって貴重な、数が少ないというイメージがある。


 しかし、それは戦闘力が低いことを表すわけではないからな。現実の亀ももしかしたら強かったりするのだろうか?


「うわ、これは地道な戦いですね。カメちゃんが敵の全ての攻撃をなんとか耐え凌ぎ、好きを見ては毒攻撃をしています。蛇も毒を持っているでしょうから、かなり時間がかかると思いますよ?」


 これは亀らしい戦法だな。亀は長寿の生き物としても知られるが、同時に兎と亀のイメージも強いだろう。亀があの童話のように、じっくりと先を見据えて頑張れるのは、とてつもない寿命があるからこそなのかもしれない。


 もし、亀が短命であったならば、うさぎのように全力ダッシュしていたのだろうか?


「あ、ついに蛇がカメちゃんの毒にやられて倒れてしまいましたよ!」






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昨日眠たかったからなのか、なぜか睡眠の話題がw

今日はぐっすり眠れてとても体調がよろしいです。ご心配をおかけいたしました。

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