第230話 毒
「あ、彼がカメの従魔に名付けをしましたよ。名前はデトックスですね、いい名前じゃないですか!」
デトックスか。蠱毒で勝ち抜いた毒の使い手に解毒するという名前をつけるなんてなんとも皮肉が効いてていい名前じゃないか。
毒という大層なものに目が行きがちだが、本当はその愛らしさがポイントであり、その魅力で人々の心の中にある毒をデトックスしてくれる、という願いを込めてつけたのかもしれない。
……何を言っているんだろうか私は。
「あ、ちょ、え? 彼、いきなり従魔にしたばっかりのカメちゃんに対して自分を攻撃させましたよ? 従魔も従魔で何も抵抗なしに噛み付いてますし、一体どうなってるんですかねこの主従関係は」
ん、従魔に自分を噛み付かせた? それは一体どういう状況下に置いてそうなるのだ? 私の常識ではどう頑張っても、それこそ逆立ちをしてもそんな発想が出てこないのだが。
「あ、」
「ん? どうしたんですか先輩。何か分かったんですか?」
「あ、いや。その亀はとても強い毒を持っているだろう? そして彼は前にもそんなことをやっていなかったか? 植物相手に」
こう考えてみると私も彼にだいぶと毒されてしまったのだろう。
「え、もしかしてもう既に持っている毒無効を超える毒を注入することで死亡数を稼ぎつつ、毒無効の上位互換を手に入れようって算段ですか?」
「あ、あぁ、そうだな」
私はただ単に死亡数を増やすということしか頭になかったが、確かに彼の場合は無効スキルの取得も視野に入れているかもしれないな。うん、私はまだそこまで毒されてはいなかったようだ。
「ん、でも彼普通に死にませんでしたよ? 全然ピンピンしてます。そして何故か穴を掘り始めましたね、それこそカメちゃんがすっぽり入るくらいの。そして、そこに彼が毒殺料理人の能力で毒を生成しましたよ? え、一体何をするつもりですか?」
「なるほど、先ほど自分に噛ませたのは毒の威力を測るためだったのか!」
「ん、どういうことですか先輩?」
「いや、さきほどのは自分を死に至らしめることができるか試したのだ。そして殺せなかったから、今度は逆に自分が亀の毒の威力を高めるために毒のプールを用意したということだろう」
「おぉーなるほど! そして、彼もそうしてますね! 凄いですね、先輩が予想を当てるなんて珍しいじゃないですか! どうしたんですか、明日は雷でも落ちるんですかね?」
私が予想を当てただけで雷が落ちるのならば、何回雷が落ちればいいんだ。
まあ、地球規模で考えればあながち間違いでもないのかもしれないが。
「あ、普通にダメージ入ってるじゃないですか。でもしっかり回復させてるから、ギリギリ動物愛護団体には怒られないですね」
いや、君の判断基準はそこなのか? その団体に怒られるか否かが重要なのか?
どちらかというと、虐待主人の汚名は避けられた、とかにすべきだろう。
「彼、従魔がダメージ食らってるのに容赦無く毒のプールに漬け込んでますね。ちゃんと回復はさせてますが。一歩間違えれば普通に死んじゃいますよ? あ、進化した」
そうだよな。流石に従魔と言えど、回復はしてるといえど、ダメージを食らわせながらの強化なんて……
え?
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