第229話 コトキレタ


 今もなおムカデとワニの死闘は続いていた。お互いの尊厳をかけて、種の誇りをかけて戦う二人にはどこか神々しさすら垣間見えたような気がした。


 そしてついにその時がきた。


「おーっと! ここでムカデの一撃が入ってとうとうワニが事切れましたー!」


 いやいや、事切れたってあんまり実況では聞かない言葉だぞ? それに頑張ったワニの最後が事切れたって。まあ、事実だから仕方がないが、もう少し別の表現はなかったのだろうか。


「だが、これでようやくこの蠱毒も終わったな。彼は最後に残ったこのムカデを従魔にでもするつもりなのか?」


「え、何言ってるんですか先輩。まだ終わってませんよ? ほら、あそこに亀がいるじゃないですか」


「ぬぅ!?」


 彼女が指差した所を見るとそこには確かに手足と頭を引っ込めた亀がいた。そして、この場所が静かになったことに気づいたのか、恐る恐る顔を出した。そして、現状を確認し、手足も出した。そしてトコトコとほぼ瀕死のムカデの元にあゆみより……


 パクッ


 その可愛らしさすらある口でムカデに噛み付いた。まあ、ポイズニストタートルであるからちゃんと毒を流し込んでいるはずで、可愛くはないな。


 そして、ムカデは事切れた。


「……亀が高みの見物をしているのに気がついていたのか?」


「ん? えぇ、というか最初からいたじゃないですか。むしろなんで忘れてたんですか? 一番最初にここに連れてこられたモンスターでもありますし、意識の外に追いやることの方が難しかったですよ、私は」


「そ、そうか……」


 なんか今まで蠱毒の戦いを熱中して見ていた自分が遠く置き去りにされた気分だ。そうか、私はずっと孤独なままこd


「あ、彼称号獲得しましたよ! ほんと好きですよねー。名称は蠱毒観察者で、効果は自分の扱う毒の威力が上がるというものですね。あ、これを毒殺料理人と掛け合わせれば結構強力になっちゃうんじゃないですかね? ますます危険人物ですねこれは」


 うむ、本当に彼は称号が好きであるよな。どちらかというと好かれている、という方が正しいのだろうが。


 そして更に毒の扱いに長けるようになったと。うん、嫌な予感がする。



「先輩! 先輩の予想通り彼は最後に生き残ったモンスターを従魔にしましたね! あのカメちゃん可愛いから私もペットとして欲しいなー」


 ポイズニストタートルをか? 家が毒ガスで充満してしまうじゃないか。


 って、そうじゃなくてこの従魔を獲得したことで彼の使えるカードに毒という大きな一枚が加わったのが問題なのだ。しかもそれは単なる毒ではなくて、強化に強化を重ねられた本来のものとは大きくかけ離れた、恐ろしい毒なのだから。






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最近また1話の文字数が元に戻ってきてる……

少しずつ伸ばしていけるように頑張ります!

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