第227話 食いしん坊なワニ
バッタとヘビが退場したこの大怪獣決戦では、しばしの停滞が生まれた。
機動力の高い魔物達が抜けて、自ら仕掛けようとするもの達がいなくなったからだろう。皆、牽制し合うだけで攻撃はしない、という時間が過ぎていく。
「おーっとここでムカデが全身から毒ガスを噴射しました! この大きくて長い体は表面積も大きく尋常じゃない量の毒ガスが蔓延していきます!」
最初に動いたのはムカデだったか。それも、機動力のなさが影響しない、その場での毒ガスによる攻撃だ。かなり良い手なのではなかろうか。
しかし、この場所は蠱毒だ。つまり、ここに集められた魔物達は皆、毒のエキスパートだ。そんな毒ガスでやられるものなんざここにはいないだろう。
そして、毒ガスが晴れて視界が確保されると……
「あ、」「え?」
ウシが倒れていた。それも体をビクビクといわせながら。
うん、ウシは毒が弱かったのかな? あくまで草食だろうし、捕食する為というよりは自衛の為の毒って感じだなのだろう。だから、そこまで毒が強くなかったのだな。
私の予想とは大きく外れて更に一体が脱落してしまった。思いのほかスピーディにことが進んでいったな。
そして最後はワニとムカデの頂上決戦だ。こちらの世界では決して戦う所が見られない両者だが、向き合う姿はとてもカッコいい。
ワニの咬合力が勝つのか、それともムカデの体躯の差が出るのか。一瞬も目が離せない展開になってきたな。
「なあ、君はワニとムカデどちらが勝つと思う?」
「んー、この二人なら流石にムカデじゃないですか? 一般的に知能が低いとされる動物もとい魔物の世界では体が大きい方が勝つと思われます。ワニもなかなかに大きいですが、ムカデの方が長さも相まって、有利のように見えますね」
なるほど確かにそうだな。体の大きさというのは単純に、力の強さや体力の多さを表しているとも言える。まあ、それは単純な話であって細かな差はいくらでも出てくるだろう。
だが、彼女はその基礎的な部分で大きく差が開くのではないかと考えたわけだな。
それでもワニの噛む力には勝てないと思ってしまうのだが、どうだろうか。それにワニには人間の十倍以上の免疫力を有しており、他の生物なら致命傷のようなダメージでも生き残ってしまう。
それを考えると私には毒に対してもダメージに対しても強そうなワニが優勢に見えてしまう。
さあ。いったい結末はどうなるのだろうか。
「おっと、先に動いたのはワニだ! ですが、向かった方向はムカデではなく、倒れたウシの方です! そしてバリバリムシャムシャと食べてしまいました! これに関しては流石にムカデさんも激怒! ここから怒りの攻撃が始まるのでしょうか!?」
ここでまさかの捕食行動に出るとは大胆なワニだな。それに、よく見るとバッタやヘビの姿も見当たらない。このワニさんは随分と食いしん坊のようだ。
人間であれば食後は体が鈍るものだがワニの場合はどうなるのだろうな。それに、ムカデは激怒している。これは、勝負あったか?
「キシャァアアアアア!!!」
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噛む力のことを咬合力と言うそうです!
日本語難しいですね…笑
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