第216話 無邪気な退屈


「はぁ、やっとスープ修行が終わりましたよ! もう、一体どれだけの時間を使えば気が済むんですか!」


 どうやら彼女はご乱心のようだ。まあ、それもそのはず、もうかれこれ一ヶ月くらいずーっと鍋に食材をいれてスープを作るという工程を見せられているからな。


 見ているこっちも退屈というものだ。


 だが、その繰り返しも今日でようやく終わったようだ。


「ん、そういえば今回はスキルや称号は獲得してないのか? 流石にこれでひと段落着いたのだろう? 何かもらっててもおかしくないと思うのだが」


「あ、確認するのをすっかり忘れてました。えーっと、え? 今回は称号が多いですね。下級料理人と、植物図鑑、動物図鑑、魔獣図鑑ですね。そしてこの三つの図鑑が統合して世界図録という称号になってます!」


「はい?」


 なんかいつもと毛色が少し違うな。世界図録なんて彼からは最も遠いようなスキルに思えんるんだがどんな効果なんだ?


「下級料理人は完璧に調理ができた際の補正値が上昇するというもので、そこまで戦闘には影響はないですね」


 うむ、確かにそれを聞く限りそうだろうな。


「そして、世界図録はその名の通り植物、動物、モンスターの図録ですね。自分の見たことがあるものが記載されていき、詳細な説明などもかかれます。これも直接戦闘に影響はなさそうですが、ゆくゆくは脅威になるかもしれませんね」


 これは相手を見ただけで情報を得られると考えれば強いかもしれないが、戦闘中にそんなことをする暇はないだろうから実質これも使わないのだろうな。


 どちらかといえば図鑑を埋める作業の方が楽しそうだ。全部埋めたら何か特典があるのだろうしな。


「はぁ、でもこれでようやく下級料理人ですかー。この調子だと上級まで行くのに一体いつまでかかるんでしょうね? もっと敵をボーンと吹っ飛ばしたり、多くのプレイヤー相手に大立ち回りをしたりするところが見たいですよー」


「まあまあ、彼にも彼のやりたいこと、そして狙っていることがあるだろうからな、観察者とはただただ観察することが重要なのだよ」


「いや、それは観察者である先輩の意見でしょ? 私はただ彼を面白いと思って観察してるだけですし、そんなこと言われてもーって感じですよ」


 まあ、それもそうだな。極論、面白くないと思うのならば見なければ良いのだし、それでも見ていると言うのは彼女が彼に何か期待していると言うことでもあるから、もっと暴れて欲しいと思うのも当然か。


「あ、あれ? 彼が鍛冶屋に向かってますよ? 何か頼んでいましたっけ?」


 鍛冶屋か、前に行ったのはいつだっただろうか、その時に何か発注していたのか?


「え、なんかすごいの受け取ってますよ? 悪魔の脇差っていう武器、短剣で、なんと悪魔との契約というスキルを使用可能になるようです!」


「悪魔との契約?」


「はい、悪魔をその身に宿すことで爆発的な力を得ることができるスキルで、代償として、スキル使用後は一週間、全スキル、称号が無効となり、ステータスも半減する、らしいですよ! かなりピーキーなスキルですね!」


 そ、そんな無邪気な笑顔で言われても……





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たまたま本編でも悪魔の脇差が出てきましたね!

運営編を書いてるとこういう狙ってないリンクが発生することがちょくちょくあります笑


これを楽しめるようになれば、かなりの上級者ですね笑

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