第211話 情報と現実世界


「あ、え? 彼が王都にふらっと立ち寄りましたよ? こんなに軽々しく入るところでしたっけ王都って?」


 王都、それは王のいる都であり、全てが集中する場所でもある。人によってはここに到達できているか否かがプレイヤーを見分ける一つの指標とする者もいるらしい。


 そう、それほど王都というのはあらゆる面で充実しており、設備、店、そしてアクセスの良さ、どれをとっても一級品だ。


 もちろん、それだけの恩恵を受けれるのに、誰でもという訳にはいかない。王都に到着するためにはそれ相応の実力が必要であるし、サービスが良質である分値段も高くなってくる。


 つまり、そこに到達するための実力と、滞在するための資金力の両方が問われるということだ。


 普通であれば、王都に行く為にパーティを組んでしっかりと準備をして臨み、その後はどうにかお金を溜めてやりくりしていくって言うの定番であるのに、それを彼はぬるっとしれっと、何事も無いように王都に入っていった、ということか。


「ん!? 彼が、彼が食死処に入っていきましたよ!」


「しょくしどころ? なんだそれは」


「はい、食死処と言うのは、食べて死ぬ処と書くのですが、ここには人生に絶望した人たちが美味しいものを食べて死ぬためにやってくる場所ですね」


「美味しいものを食べて死ぬ?」


 何をいってるんだ彼女は、というかそもそもなんでこんな場所が王都に存在するんだ? というもっとメタ的なことを言うのならば、誰だこんなものを作ったのは、何の為に作ったのかちゃんと説明してほしい。


「これは何の為に作られたんだ?」


「ん、あぁこちら側の話ですね。それで言うと、この施設は毒を使う職業の転職のために用意されたものですね。それこそ暗殺者であったり、盗賊系統の職業も大丈夫だったはずです。とにかくそういった人たちのための施設として用意されたものですね」


「なるほど……」


 意外にもちゃんとした理由があったな。確かに転職するための施設っていうのは街の至る所に隠されている。それの一つであるならば別に何らおかしいところではないな。だが、気になる点は他にもある。


「では、なぜ彼がここにくることができたんだい? 別に公開されている情報でもないのだろう? それにまだ到達したプレイヤーがいるわけでもないはずだ。ならば何故ここに迷わずくることができたんだ?」


「えっ、確かに何ででしょうか? 彼はギルドに寄った後にここに一直線に走っています。ギルドでの会話を検索してみても食死処のワードは出てきませんから、おそらくここで情報をもらっているわけではなさそうです」


 会話をワード検索ってしれっと凄いことするな。まあ確かに全部話を聞くよりかは効率的だ。


「そもそも私たちはずっと彼の動向を見ているわけですし、怪しい動きは感じられませんでした。それに、ここの情報を知っているNPCも限られていますから、彼が情報を入手したとするならば、現実世界でのことなのではんないでしょうか?」


「現実世界、か」


 彼の現実世界というのはどういうものなのだろうか。こういうゲームを運営している以上気になっても仕方のないことだし、気になってはいけないのだが、ここまでくると考えるなという方が無理だろう。


 というか、現実世界でどうやって情報を入手するというんだ? 

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