第210話 その道一本
「そのー、なんだ塩分不要と嘔吐無効っていうのは何となく察しがつくのだが、水操作ってのはどういう効果なんだ? いやまあ、これも察しがつかないわけではないのだが、気になってな」
一体私は何に言い訳をしているのだろうか。言い訳する必要性すら感じないのに、人間とは不思議なものだな。
「えーと、水操作はですね。自分が触れている水を自在に操ることができるというスキルですね。今の段階では自分の体から周囲二センチまでの範囲の水を操作できるようです」
「今の段階、というのは?」
「はい、熟練度に応じて操作可能範囲が広がっていきますね。彼の場合は称号によってスキルの効果が強化されていますので、どこまで広がるかは何とも言い難いですね」
そ、そうだよな。そこなんだよな、彼の恐ろしい所は。
彼のステータスを把握したところでそれは本来の力を表しているわけじゃないんだよな。
彼には色んな所で色んな補正がかかっているから正直な所、彼の出せる攻撃の正確な値を出せと言われると少しキツいだろう。
「でも、水操作は今持っている彼のスキル達に比べたらそこまでの脅威はないだろう?」
「まあ、確かにそうですね。ですが、彼はこんなスキルにも有用性を見出しているようですよ?」
「なに、有用性だと?」
「はい、何と自身の周囲の水を操れるというのを利用して、足元の水の座標を固定することによって水の上に立つ、という芸当を確立していますよ」
「なっ、確かにそんな使い方もできるのか……」
「はい、ですから攻撃力が低くとも使い道はありますし、十分脅威になりうるわけですね。それに、」
「ん、それに?」
「ほら、今まさに彼が実践しようとしていますが、手のひらに水を固定することで、相手の顔面に掌を添えるだけで溺死させることも可能になります」
それは……何とエゲツない技なんだ。水操作というスキルをゲットした者が何人この使用方法に至るのだろうか? 自分が死に最も近い場所にいたからこそ、相手を死に至らしめる、殺すことがすぐに思い浮かぶのだろうな。
「彼は防御にも使えないかと試行錯誤していましたが、彼の場合はそんなことをするよりも普通に防御した方が強いですからね。流石にそれは諦めていました」
もう、水操作の使い方がその道一本の人じゃないか。そこまで水操作のポテンシャルを見出せるか? 防御に関しても彼だから必要ないだけで、一般プレイヤーなら小さな水筒を持ち歩いておけば結構使えるのでは
ないか?
「あ、野生のモンスターを水操作で奇襲して倒しちゃいましたね。それによって暗殺者っていう称号も獲得してますね」
「ん、称号を獲得したのか?」
あまりにもサラッとした報告だったから聞き流すところだったぞ?
「はい。暗殺者という称号で効果は奇襲の成功率を上げ、またその初撃の威力を上昇させるというものですね!」
そうか、何気にちゃんと強いんだな。
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