第202話 初心
「大きい方のイベントだって?」
「えぇそうですよ。毎月開催イベントの優勝者だけが参加できる頂上決定戦です。もちろん、彼も第三回の時に優勝しているので、彼に参加の意思があれば出場することになると思いますよ」
「なっ……」
彼が、イベントに参加するのか。それも、月に一回の定期開催イベントじゃなくて、年に一回の大型イベント、しかも今回が初であるから、誰しもが注目する、そんな大会になるはずだ。
前回大会では優勝したのにも関わらず、なぜか目立たなかった彼は、今回で確実に注目の的となるだろう。正直、運営目線でみるとその差は圧倒的だ。彼が逆立ちしても、相手が逆立ちしても勝てないレベルだろう。
そして、今まで注目されていなかったプレイヤーが大きな大会で名だたる猛者たちに快勝してしまったら一体どうなるのだろう?
ファンは当然ながらアンチも発生するだろう。チートなどを疑ってくる奴らもいるのだろうな。そういう輩はそんなことできるはずも無いと分かっていながら文句を、不満をぶつけるために言っている節もあるから尚更タチが悪いのだ。
だが、もう時は動き始めてしまっている。私がもっと早く勧誘作戦を実行できていれば、彼を運営の一人とすることでなんとか出場させないことができたかもしれないのに……
いや、まあ本人が出場したいと言ったらそれまでか。逆に、彼がまだ確実に参加すると決まっているわけでは無いため、そこに期待できる分、まだマシと言った所だろう。
「あ、彼は参加するようですね。今、最終確認が全プレイヤーの最終確認が取れました。これで予定通り明日からイベントを開催することができそうですね」
「明日!?」
もう、そんな直ぐそこまで迫ってきていたのか?
「はい、明日ですよ? 正直なところ、私たちはあまりイベントの運営に関しては関与していなかったですから、知らなくても仕方がないんですけどね。いやー、それにしても楽しみですね。彼の晴れ舞台がどんなものになるのか、高みの見物と洒落込みましょうか!」
いやいやいや、なんでそんなに楽しみにできるんだ? だってイベントだぞ? 彼が適当にスキルや称号を獲得するのとはわけが違うんだぞ? 衆目に晒されるんだぞ?
「はぁ……」
これが若さというものか。彼の存在を初めて知った時は、彼女の方が慌てて私の方が楽しみ、ワクワクしていたというのに、ここまでの規模になってくると、逆に後輩は吹っ切れ、私は頭を抱えるという構図になってしまったな。
まあ、そうだよな。私もここは初心に立ち戻るべきだろう。せっかくの年に一度のお祭りなのだ。楽しまなければ逆に勿体ないというものだ。
どんな結末になろうとも、私たちはそれを操ることはできないのだから、手元にやってきた結果の中で精一杯足掻くだけだな。
まだ、最悪の結末になったわけでもない、絶望するにもまだ早い。
ゲームというのは、人々を楽しませるために存在するものだ。ならば、その製作者が全力で楽しまなければならないだろう。
よし、どんな運命が来たって全力で楽しんでやる!
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注)最終回ではございません。
一応、この作品の主人公は先輩ですからねw初めての主人公ムーブができて本人も喜んでいることでしょう。
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