第201話 彼を引き込む方法


「よし、じゃあ選定も終わってひと段落がついたから、今日は彼をこちら側に引き込む計画を考えようか」


「お、いいですね。ちゃんと計画を練らないとできることもできなくなりますからね!」


「前回は彼をこちらに引き込んだ後についてを具体的に会議したのだが、そもそも、どのようにして彼を入れるのか、という最も重要なことについて話し合っていきたい」


「わかりました! そうですね、一番安直な案ですと、現在のエンドコンテンツに最も近い存在である、悪魔の親玉に設定する、なんてのはどうですか? 手っ取り早くてわかりやすいのでアリっちゃアリだと思うんですけど?」


 あれ、今日は一人会議は発動しないのか? 前回の、引き込んだ後の具体的な話っていうのは彼女がほとんど決めたことなのに、それについても何も反応していない。


 彼女は前回の記憶はあるのだろうか? ……いや、今は考えるべきではないな。折角、こういう時間を設けられたというのに脱線するのはよろしくない。


「確かにそうだな。彼自身をそのエンドコンテンツ自体に含める、というのはいいかもしれない。だが、現時点の彼では、今の悪魔の総大将には少し実力的に劣っている。それを考慮すると、彼を今すぐ悪魔のトップに据えるというのは難しいだろう」


「あー、確かにそうかもしれませんね。いくら彼が強いと言っても、悪魔全体を敵に回すのはキツイでしょうしね」


「そうだ、となると、既存の勢力に加わるのではなく、全く新しい勢力を彼自身に一から構成してもらう方がいいとは思うのだが……」


「え、それいいじゃないですか! そっちの方が彼自身も楽しいと思いますし、ちょうど従魔を沢山保有してますから、この調子で増やしていけば普通に勢力と呼べるくらいの規模感にはなりそうですけどね? 逆に何を懸念しているんですか?」


「あっいやー、確かに、行けなくはない、のか?」


 なんとなく、そんなことは無理だと勝手に決めつけてしまっていたようだ。確かに言われてみればいけそうだし、今の彼ともマッチしている。


 従魔もいるっていうのが、後押しにもなる。彼自身、上に立つ方が向いている気がするし、リアルでも恐らく人々の上に立っている人間だろうからな、よし、ここは思い切って舵を切ってみてもいいかもしれない。


「ん、しかし新たに勢力を作るとは言ってもどうするんだ? そんなに簡単に作れるものでもないだろう?」


「え、適当に役職を与えればいいんじゃないですか? 私たちがしないといけないことは、勢力を作ることじゃなくて、彼に勢力を作らせることですから、何か大義名分を与えればいいんですよ」


 な、なるほど、やはりこういう所をみると彼女は賢いのだと再確認させられる。何気ない発言が的を得てるし、何より理解力と発想力がずば抜けている。


「それこそ、魔王とかちょうどよくないですか? このゲームに珍しく魔王と勇者がいませんもんね。まあ、プレイヤーが勇者とするなら、それと敵対する魔王って構図も描けますし、彼自身、勇者って柄でもないですよね? モンスターも沢山飼っていることですし、まさに天職でしょ!」


 お、おう、彼女から湯水のごとくアイデアが湧き出てくるな。これほどポンポンと思いつくのか……すごいな。


 確かに彼を魔王にする案はいいかもしれない。彼の柄に合うっていうのも分かるし、このゲームににもフィットしている。魔王や勇者を役職として設定していなくてよかったな。


 となると、今後のアプデで闇堕ちするルートを新たに開発してもいいかもな。もしかしたらだが、彼に協力するプレイヤーも出てくるかもしれないしな。


 よし、彼をどうやって引き込むか、大まかな案は決まったな。あとは細部を練り込んで、具体的にどうやって魔王にするのか、これを話し合わなければならない。


 でも、なかなかいい具合に煮詰まってきているのではないだろうか? この調子であれば、もう、すぐにでも……


「あ、先輩、そろそろイベントの時期ですね。いつものではなくて、おっきい方の」


「え、」


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