第191話 彼に関する決定事項
夜通し行われた、彼女の一人会議の結果、以下のことが決定した。
一つ、彼に対しては必要最低限の補助、支援を行うこと。
これは彼をこちらに引き込む上で最も重要であることかもしれない。どこまでするのかの線引きだな。
補助や支援を全くしないのは、彼にとってのメリットがなくなる。つまり、彼がこちらに来てくれなくなるということだ。
人が自分に得のないことをわざわざしてあげるほどのお人好しでないことを私たちは知っているからな。
特にこのゲームの世界ではそれが顕著だ。いかにプレイヤーに得を、利益を、快感を与えられるかが鍵となってくる。
そして、それを満たす為には補助や支援は必要不可欠になってくるのだ。
ただ、それをしすぎると今度はただの贔屓になってしまう。贔屓の問題点は言うまでもないだろう。
他のプレイヤーのことを考えれば自ずと分かることだ。皆も学生の頃、先生に贔屓されている子をみると、複雑な気持ちになったことだろう。
となると、加減が難しくなっているわけだ。彼に行動を促しつつ、周りのプレイヤーから文句が出ないようにしなければならない。
そこで、我々は一定のラインを設けることにした。それが最低限というものだ。
これはもう我々の独断と偏見によって定められるものになってはしまうが、この文言があることによって、我々のやり過ぎ、やらなさ過ぎを防止する。
以上が 一つ目の彼に対しては必要最低限の補助、支援を行うこと、の説明になる。
次に二つ目は、彼の存在(プレイヤーであること)を完全に秘匿すること、だ。
これは一つ目の内容と少し被るが、非常に重要なことである。
そもそも、我々がいくらラインを設けたところで、その事実に対して贔屓だ、と言ってくる輩はいるだろう。そして、それは仕方のないことだと思う。
何故なら、自分もその立場になったらその声を出さないとは言い切れないからな。
だからこそ、その摩擦の可能性を極限まで低くする為にも、この完全なる隠蔽が重要になってくるのだ。
これをどれだけ実行できるかによって、このプロジェクトの成功が決定すると言っても過言じゃないほどだ。
そして三つ目、これはバレた時用の対応策になる。
二つ目であれだけ重要とはいったものの、万が一、と言うものがある。事故はわかってて起きるわけではないので、だからこその対応策だ。
それは、完全に彼をこちら側に引き込む、ということだ。これは単に協力してもらう、ということだけに留まらず、従業員として、正式にゲームに関わってもらう、ということだ。
正式な雇用関係ではないが、形式上、契約という形をとって、ちゃんと依頼していることになれば、万が一露見することがあっても大丈夫、もしくは少しはマシになる筈だ。
以上を持って、彼に対する決定事項の説明が終了した。
これは、別にこれで確定というわけではなく、これからも適宜増えていくものである。その中で、これだけは守るべき、というものであるため、これからも常に意識を向けて対応しなければならない。
「はぁ……」
これらを頑張って聞くだけだった私の身にもなってくれ。しかも、ずーーっとだ。
もう、寝よう。ただひたすらに眠いのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます