第192話 オーバー
「で、先輩、彼についてはどうするんですか? 彼をこちら側に引き込んでからの対応は考えましたが、そもそもどうやって引き込むんですか? 普通に考えたら、普通にゲームを遊ぶ方が楽しそう、って思うんじゃないですか?」
「あ、確かにそれもそうだな」
お前が勝手に考えてただけだろ、とも思わなくもないが、必要なことだったので、別にそれはいい。
それよりも、どうやって引き込むのか、これに関してはしっかり考えないとな。どのような条件を出すかで印象も変わってくるだろうし、その印象は後に引くものだろうからな。必ず成功させなければならない。
下手したら、このゲーム全体に関わってくるほどの大事になる可能性すらあるのだ。万全を期して望みたい所だな。
「あ、先輩、先輩! コレ、大変なことになってますよ!?」
これからどうしたもんかな、そんなことを考えていると、彼女からいつものように、危機迫った報告を受けた。
彼女の報告はむしろ危機迫っていない方が珍しく、もうその様子に体が反応しづらくなっているのだが、それは別に情報が重要でないことを示していないから厄介なのだ。
彼女がただオーバーなだけ、ならどれだけよかっただろうか。まあ、実際のところ彼女は少し、いや多少はオーバーなのだがな。
「ん、どうしたんだ?」
「あ、はい、ちょっと目を話していた隙に色んなことが起こりすぎて、何から話せばいいのか、わからないんですが、まずはそうですね、彼の見た目が大きく変化しました」
「ん、ん? 見た目が変わった?」
それのどこが重要事項なのだ? これは本当に彼女がただただオーバーなだけだったのか?
「はい、どうやら彼が以前、鍛治屋に頼んでいた防具が完成したようです。普通の防具なら大したことないのですが、その装備がなんと、、全て悪魔の素材によって作られているのです!」
「なっ!?」
おいおい、いい加減にしてくれよ全く。そんなことまでしてくれるのか。
そもそも、このゲームにおいて防具は意外にも重要な役割を果たしてくる。その理由は主に二つある。
一つ目が防御力などに代表される、着用することによってステータス的強化が見込める点だ。そして二つ目が、装備を着用することで、獲得できるスキルにある。
一つ目もかなり重要なのだが、恐ろしいのが二つ目なのだ。防具をつけるだけで、一つのスキルが使えるようになるのだ。
そして、そのスキルは使っていくうちに自分にも刻まれる。彼が、前の双頭虎の装備で並列思考を獲得し、それを使っていくうちに熟練度をあげ、分割思考を手に入れたことを見ればわかりやすいだろう。
つまり、装備を着用するということは、防具的な意味合いだけでなく、それを超えて新たな方向への道標ともなるのだ。
そして、その道標になる装備が、今回の彼の場合、悪魔、悪魔なのだ。ことの重大さがわかっていただけただろうか? 彼女は決してオーバーではなかった。
「そ、それでスキルは何が発動したんだ?」
「はい、デスノートです」
「ん、デスノート?」
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